たとえばなし

 

・騒がしき埃流して五月雨

 

聖書でも法華経でも、
たとえばなしがよくでてきます。
なんだこの子供だましみたいなはなしは、
と、
高をくくって読んでいた
時期もありました。
が、
読めば読むほど、
かめばかむほど、
面白くなってきます。
うつむかざるを得ない自分に
気づかされます。
たとえばなしには、
無駄なおしゃべりを黙らせる力がある。
イエス様もお釈迦様も、
そのことを知って、
たとえばなしをしていたのでしょう。

 

・めざめよとせいいつぱいのほととぎす  野衾

 

両手両肩

 

・風を聴く坂の途中の木下闇

 

会社帰り、
スーパーでちょっと買い物でもしていこうかな、
と思ってコースを変えたら、
わたしの前を、
背の高い頑丈そうな女性が歩いていました。
ゆっくり大股で歩いていきます。
しかも、
両肩に布製の袋をぶら下げ、
両手にはレジ袋、
計4袋。
ぶら下がり方から推して、
どれもそれなりの重さがありそう。
すごいなあ。
肩凝らないのかな?
たくましいなぁ。
うらやましいなぁ。
と、
驚いたことに、
わたしが向かうスーパーに入っていきました。
ま、まだ買うつもりのようです。
しかし…
五つ目の袋をどこにぶら下げるつもりなのでしょう?
ふむ…
ん!
もしや。
首?

 

・朝風呂やきのふの憂さの捨てどころ  野衾

 

新井奥邃先生記念会

 

・緑蔭の葉擦れひびけり奥邃忌

 

新井奥邃が亡くなったのが一九二二年六月一六日。
毎年、
命日近くの日曜日、
墓参を兼ね、
奥邃に学ぼうとするひとが集まり、
近況報告やら勉強会やら。
ことしは、
奥邃の短文からわたしが九つえらび、
昨年に引きつづき、
善読についてすこし話しました。
自分のエゴイスティックな土俵に引き込んで読むことを、
奥邃は厳しく戒めています。

 

・白紫陽花いずこに色を忘れしや  野衾

 

 

梅しごと

 

・空梅雨や刻々と雲太りゆく

 

きょうから五日間は二十七候。
梅子黄、うめのみきばむ。
梅の雨と書いて「つゆ」ですから、
古来より、
この時期に梅の実がふっくら色づくのでしょう。
我が家でも、
梅醤油を作るべく、
家人せっせと梅しごとに勤しんでいます。

 

・空梅雨や明日の予報を疑へり  野衾

 

西瓜競演

 

・夏草や穴の空きたる破れ笠

 

スーパーから熊本県産の西瓜が姿を消したと思いきや、
あいだを措かずに、
千葉県産のが置かれるようになりました。
熊本県産と千葉県産では
どちらの西瓜がうまいか?
ということで、
しょっちゅう西瓜を食しています。
まるごと一個買うことはなく、
よく行く店では売ってもいないし、
六分の一のを買ってきます。
それでも一度では食べきれず、
半分は冷蔵庫へ。
熊本県産に軍配か?
と、
ややそちらに傾きかけていましたが、
こ、これは、
と唸るような千葉県産のものあり、
けっきょく、
あるとすれば個体差のようで、
県による有意の差は
食べている限りは認められない
というあたりが結論。
熊本県産でも千葉県産でも
西瓜は西瓜、
三角に切った頂点にかぶりついたときの音が
えも言われません。
そしてそれにつづくあの甘さ。

 

・夏草や重さ湛えて揺れてをり  野衾

 

腐草為蛍

 

・計画はだれにも負けぬ夏休み

七十二候で今週は二十六候の、腐草為蛍。
くされたるくさほたるとなる。
水辺の草むらでは蛍が孵化するころだそう。
子どものころ、
よく蛍をとってきては、
蚊帳のうえに放して下から眺めていました。
その蛍、
眺めてはきれいですが、
つまむと、
その指先、掌は妙に臭い。
臭いは草いか?
そう考えると、
草のにおいに似てないこともない。
いずれにしろ、
草が腐って蛍となると見た古代のひと、
他人と思えない、
親近感さえ覚えます。

・Pのうへ盗人のごと蚊喰鳥  野衾

 

風のことば木のかたち

 

・涼しさや草にならへの声すなり

俳句をやっているせいも少しはあるかと思いますが、
それよりも多く、
年齢が作用しているのでしょう、
ふと立ち止まって
雲をながめ、
風にそよぐ竹の葉音に
耳を澄ますことが多くなりました。
それでホッとし
なぐさめられることが多い。
ひとは木に帰って行くんでしょうか。
くらべ、
わが身をふりかえり、
ひとの言葉のうすく儚く。
きょうは朝から雨。
三渓園では、
何十年ぶりかで竹の花が咲いているそうです。

・夏の風首をかすめて吹き抜けり  野衾

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