踏絵

 

・春の雨受けて華やぐ傘の色

映画作家の大嶋拓さんが拙著『石巻片影』
自身のブログに取り上げてくださった。
大嶋さんは、
この本が東日本大震災に向き合うための
いわば「踏絵」であったと記している。
踏絵とは?
わたしがへたな要約をするよりも、
ぜひ元文についていただきたい。
コチラです)
大嶋さんの文章を何度か読んでいるうちに、
学生のころ、
マルクスの『資本論』を読んでいたことを思い出した。
わたしのアパートに経済学部の学生が3人、
(4人だったかもしれない)
オルグと称して押しかけてきた。
マルクスがどうの、
レーニンがどうの、
今の時代がどうの、
学生のあるべき行動はどうの、
行き着くところ、
ある学生集団への勧誘だった。
話しているうちに、
彼らが『資本論』をまともに読んでいないことに気づいた。
寮の先輩の勧誘を断り切れずに、
そのような活動をしていることが見えてきた。
わたしが彼らの誘いを断ったのは言うまでもない。
最初から寮の先輩の話をしてくれたら、
むしろ心を動かされたかもしれない。
わたしは、
これが正しい行いだとして
特定の行動を強制するのも、されるのも嫌いだ。
そこにウソが入っていたらなおさら。
納得すれば、強制力を働かさなくても動くのが人間だと思っている。
個性は文字どおり一人ひとり違っている。
…………
大嶋さんが、
自己防衛のために震災関連の情報を遮断してきたのに、
拙著のページをゆっくりゆっくり
めくってくださったことがありがたく、
文末の
「私もやっと、あの震災を現実と認識し、
そこから一歩を踏み出す決心がついた気がする」
には手を合わせたくなった。

・笹舟の浮かぶ瀬もあろ春の風  野衾