横浜水信

 

・猫停まりまた歩き出す春の朝

よこはまみずのぶ。
大正四年といいますから1915創業、
フルーツのお店。
桜木町駅北口をでてすぐのところにもあり、
先日そこでイチゴミルクのジュースを飲んだとき、
メニューに、
メロンジュース800円
とあったのが妙に気になり、
昨日、
店に入って頼んでみました。
「メロンのジュースをください」
窓際の椅子に座って待っていると、
中で何やらシャカシャカ音。
まもなく、
「マスクメロンジュースでございます」
ん?
メニューは「メロンジュース」だったのに…?
そうか。
季節によって種類が違うということか、
な?
ともかく。
ズル(ストローで飲む音)
あっ!
マスクメロンの味だ~~~!!
こ、こ、これは!
生き返る心地がしたのでございました。

・春眠や時間ぎりぎり湯を出でぬ  野衾

鉄瓶で白湯

 

・春の夢見知らぬ丘に立ち至り

乾燥しているこの季節、
たとえば冷たいサーダーを喉を鳴らしてごくごく飲めば、
もうもう至福の時であります。
なれど、
そこをぐっとこらえて鉄瓶で白湯。
コーヒーを淹れるのも
鉄瓶で沸かしたお湯をつかうと
美味しくなるぐらいですから、
白湯もただの白湯ならず。
まろやかに体の隅々に沁みていきます。

・春風や吾のこころを撫でて吹け  野衾

安心の川

 

・春の夢さきちゃんと行くマラソンだ

物心ついてから
小学校低学年ぐらいだろうか
祖父と祖母に
はさまれて 寝ていた
右にころがれば 祖父
左にころがれば 祖母
夏ともなれば
蚊帳まで吊って
しずかな祭りの始まりです

ほー ほー ほーたるこい

祖父の匂いは 藁と馬
祖母の匂いは 山と雨
わたしは
安心の川の中にいて
気がかりなことは毛ほどもなかった
右にころがれば 祖父
左にころがれば 祖母

いまは二人
小さい写真に納まり
わたしの頭の上にいます

今宵も雨が降るわいな

・春の風土の中から芽吹かせよ  野衾

あってもなくても

 

・春の夢恋する人の別れかな

学生時代、
ちょうどジャズを聴き始めのころ、
ジャケットが気に入って買った
数枚のレコードの中にそれはありました。
スパイロジャイラの
『モーニングダンス』
どこか南国風の、
それでいてシャープな
かっこいい音楽を想像していたのですが、
出てきた音は、
???
デパートに入った時に流れている、
あってもなくても
どっちでもいいような
(スパイロジャイラさんゴメンナサイ!)
そんな音に思われたのでした。
あれから三十八年、
あの
あってもなくても
と思われた音楽が、
なんだかとっても懐かしくなり、
同じ絵柄のCDを購入し、
会社でもかけ、家に持って帰ってもう一度。
かつては「あってもなくても」
としか感じられませんでしたが、
いま聴けば、
南国の花や虫や森につつまれるような
そんな愉快な気分に浸れます。

・啓蟄になれど蟲まだ土の中  野衾

ミルクコーヒー

 

・知らぬ人五六人あり春の夢

上島珈琲のミルク珈琲270cc160円は
ちょっと高めですが、
あっと驚く美味しさで、
ごくごく喉を鳴らし
一気に飲んでしまいます。
愛飲しているうちに、
ひょっとして
これは自分で作れるかも
と思い、
さっそく試してみました。
サイフォンでふつうに
三人分のコーヒーを入れ、
砂糖を少し多めにして混ぜ合わせておきます。
それと「明治おいしい牛乳」1000ccを混ぜるだけ。
ホットでもアイスでも美味しい!
上島珈琲のミルク珈琲に限りなく近い。

・あの人も笑つてゐるよ春の夢  野衾

ぱんぱで

 

・雀らも来て騒ぎけり雛祭

雪解けの道は
土と雪が混じって汚く、
ぐじゃぐじゃどろどろしていますが、
日に日に乾燥し白っぽくなっていきます。
そうなると、
外に出ないではいられません。
白く乾いて泥濘のない硬い道を秋田では、
「ぱんぱで」と言います。
どれぐらいの範囲で使用するかは分かりません。
それほど広い範囲とも思えません。
が、
この「ぱんぱで」
いい言葉だなあと思います。
たとえば、
板の切れ端を持ち出して、
乾いた白い道をはたいたら、
パンパンパンと音がするでしょう。
そのパンパンパンをとらえて「ぱんぱで」
長く重い冬から解放され、
いよいよ春を迎える弾んだ気持ちが込められているよう。
田仕事も始まります。

・自転車でぱんぱで道を走りたし  野衾

足裏カイロ

 

・春の空威厳たたへし烏かな

腰に貼るタイプや
ポケットにしのばせるタイプは
これまで愛用してきましたが、
このごろ、
中敷きのように靴に入れるタイプの
足裏カイロを使っています。
足先がぽかぽかして何とも気持ちよく。
手放せません。
いや足放せません。
ちょっと今日は寒なぁと思えば、
駅までの途中にあるコンビニに寄り、
一足分買ってすぐに靴に入れます。
そうすると、
帰宅するまでノー・プロブレム!

・かまやつの空三月に広がれり  野衾