深雪

 

・雪かきの父の眼鏡の曇りけり

深い雪と書いて、
みゆき。
俳句を考えていたら、
不意に思い出しました。
高校教師になり、
初めて担任した高1のクラスにその名の生徒がいました。
明るく元気、はつらつとした子で、
英語、国語をはじめ、
数学以外はいつもトップクラス。
ところが、
数学だけはからっきし。
そこで、
なんでだろうと疑念がわき、
放課後だったか、
夏休みだったか、
記憶が定かではありませんが、
その子のためだけに、
補習みたいなことをやりました。
わたしは社会科の教師でしたが、
数学が好きだったし得意科目でもありました。
その子のため
ということはもちろんですが、
数学あるいは算数の学習過程の
どこかでつまずいているはずだと睨み、
それがどこでなのかを確かめたかった
ということも
個人的にありました。
最初は恥ずかしがっていた深雪さんですが、
一対一の勉強に
だんだん慣れていくようでした。
そしてついに発見!
分数の割り算の理屈が
どうやら合点がいっていないのでした。
そこでつまずいて、
以後ガタガタと…。
深雪さん喜んだ喜んだ。
わたしもスッキリ!
高校を卒業した年、
深雪さんは北海道を旅行し、
アイヌの木彫り人形を
お土産に買ってきてくれました。
きみまろ風に言えば、
あれから三十五年
にもなりますが、
今も大事にとってあります。

・飛び出して脚に重たき深雪かな  野衾