寂し老人

 

・診察を待つ酷寒の待合室

体調悪しく医者に行ったところ、
声のドでかい迷惑老人がいました。
「あれは市のバスかね。見たことねーな」
「私に話しかけているのですか?」
「そういうわけじゃねーけど、そうでもあるよ」
「市のバスじゃないと思いますよ」
「そうだよな。見たことねーもんな」
「○○病院循環て書いてありますね。ノンステップバスとも…」
「ノンステップバスは分かるよ。それは市バスにもそういうのがあるから」
「そうでございますね」
「あ、あれやっぱり市のバスじゃねーの、市バスだよ市バス!」
「そうでございますか」
窓越しから見える小型のバスが市バスだろうが、
市バスでなかろうが、
それは老人にとっても
誰にとっても、
今のところどうでもよいことらしく感じられ。
むしろ割れんばかりの声のでかさが
いい迷惑なのでした。
「△△さ~ん、一番診察室にお入りください」
やさしそうな△△さんは、
ようやく迷惑老人から解放されたのでした。
病院待合での出来事です。

・母譲り真面目さぱっぱ梅の花  野衾