淵に立つ

 

・秋風を耳に書をよむ侘び住まい

神奈川新聞にでていた服部宏さんの評がよかったので、
深田晃司監督『淵に立つ』を観に
シネマ・ジャック&ベティへ。
町工場を営んでいる若い夫婦のもとへ、
わけありげな一人の男が訪ねてきた。
わけありげな男を演じるのは、
浅野忠信。
顔と名前は知っていましたが、
まともに見るのは今回が初めて。
どの役者もよかったし、
物語も緊張をはらんで面白かったですが、
浅野の存在感は格別、
圧倒的。
凄みのある立ちまわりで、
セリフのないシーンでも
目を離せませんでした。
横浜出身ですから、
いつか接触の機会があるかも。

・石垣を身を乗り出して薄かな  野衾

バルザック

 

・やや寒し図書館横のダンス像

やっぱり小説の王でしょう、
そう思ってきたし、
今もその考えに変りなく、
そのせいかどうかはわかりませんが、
バルザック関連の仕事を二本いただき、
ただいま鋭意進行中。
ひとつは評論、
ひとつは翻訳。
こういうことってけっこうあります。
詩に夢中になっていると、
エリオット詩に関する
評論の原稿が入ってきたり、
カポーティ小説の
詩的特質に関するものだったり、
面白くて不思議です。

・風来り身に入むころとなりにけり  野衾

キケン自転車

 

・露ひとつ落ちて湿りし季となりぬ

夕刻、
行きつけの珈琲店で豆を買い、
踏切で電車の通過を待つこと数分、
ようやく遮断機が上がり、
踏切をわたって
正しく道路の右端を歩いていたのですが、
ん、
そうか、
ドラッグストアに寄ろう、
ハッピーターンもなくなったし、
と、
後ろを振り向いた瞬間、
自転車が体すれすれに走っていきま、
バッ、バッ、
バッキャロー!
ぶっ殺すど!(こころの声)
いやほんと
危なかった。
呆れてしばらく踏切の方を見ていたのですが、
さっきの自転車以外にも、
タテヨコナナメ
無茶苦茶に
自転車が走ってくるのでした。
ダメだこりゃ。
自分で自分の身を守るしかない。
歩くときは、
後ろから
キケン自転車が来ている
と思って歩く以外に方法がなさそうです。

・鰯雲切れ切れの字やなに告げる  野衾

残暑でも

 

・崖っぷち這い上がりくる虫の声

十月だというのに猛烈な残暑で、
世の中だけでなく、
天気まで狂っているとしか思えません。
が、
早朝は格別、
寸分の狂いなく、秋です。
飯田蛇笏の句に

芋の露連山影を正しうす

がありますが、
早朝の秋は、
どこを眺めても「正」という字がふさわしく、
ほうとため息が漏れます。

・鰯雲詠みしあのひともういない  野衾

傷つくなぁ

 

・耳元を過ぐる風あり秋を撫づ

別に恩を着せるわけではないけれど、
ふつうに相手のことを思ってしたことが、
どういうわけか
曲解され、
なんでそういう言い方になるかなあ
と、
あらためて、
人間が怖くなることがあります。
これまた
パソコンのフリーズと同じで、
グサリやられると、
すぐには回復不能。
とくにメールのなにげない文言が、
なにげないだけに、
心情が現れているようで、
グサリ。
アイタタタタタ。

・秋の風またこの風に吹かれけり  野衾

フリーズ

 

・かきうれてしずくたらりやとうたらり

家のパソコンの調子がよくなく、
すぐにフリーズしてしまいます。
ごくたまにのことならば、
ありゃりゃ固まってしまったわい、
と、
余裕を見せることもできますが、
一文書を入力している途中三度もやられると、
コンチクショウ!!
つい、
キーボードをバンバン叩いてしまいます。
機械が不具合だと頭まで不具合。
家人が診てくれ、
少し改善したような。

・横須賀へ世もかたぶきぬ虫の声  野衾