七と五

 

・艶やかに柿ひとつあり卓の上

俳句をやっていると、
つい語数を数えてしまいがちになります。
きのうのNHK「ガッテン!」の特集は、
「頻尿、尿漏れ、残尿感」
声に出し唱えてみると、
なんとも調子がいい。
ヒンニョウニョウモレザンニョウカン、
ヒンニョウニョウモレザンニョウカン、
はい、みなさんで、
ヒンニョウニョウモレザンニョウカン、
ね。
ヒンニョウニョウモレと
ザンニョウカンだと
正確には八音と六音ですが、
もともと
七と五のあいだには、
ほんの隙間のような間がありまして、
これがリズムをつくっていきますから、
間を一音とかぞえると、
八と六。
番組の内容もよかったですが、
語調も。

・小便の出が気にかかる秋の暮れ  野衾

空の劇場

 

・十六夜の月の白さの在りどころ

春夏秋冬、
いつでも月は見られますが、
気温、空気の具合もあってか、
いまの時期の月はすさまじいものがありまして。
この日曜日は満月。
ちょうど国立劇場に
長唄を聴きに行っていた
その帰り、
タクシー乗り場の列に並んで観た月は、
まさに空の劇場。
宣長も、
こんな月みてあはれ
と言ったかも
と。
翌夜は十六夜。
色もぬけ。
白く煌々と輝きわたります。

・遮断機の音に和するか虫すだく  野衾

感想

 

・葉の上のまんまるまるの露ひとつ

仕事がら本をいただくことがありまして、
その場合、
なるべく早めに読み終え、
送ってくださった著者に
手紙か電子メールか電話で、
感想を伝えるようにしています。
本を読みながら、
いろいろと思考がめぐるわけですが、
静かに沈んで息つく
こともあれば、
つぎつぎアイディアが浮かび、
そのアイディアが
どういうわけか、
まったく別ジャンルの
思念、語彙、色、イメージに飛び火し、
火花を散らしたり
混交したり。
からだとこころとあたまが
沸き立っているときは、
冷めぬうちに電話をかけます。

・いかにして刷りだしせんや色の秋  野衾

へそ曲がり

 

・蕣や水を吸い上げ色を成す

ぶつけた覚えはない。
水がたまっているわけでもない。
まして、
皿が割れたわけでも
ひびが入っっているわけでもない。
なのに膝が痛いのはなぜか?
ん!?
ひょっとして…。
痛風?
そういえば、
はじめてやったときも、
足の親指の付け根ではなく、
くるぶしからかかとにかけてでした。
歩けないほどではないので、
前ぶれかもしれません。
早く気づいてよかった!
ということで、きのうからビールを控えています。
なんにしても大したことはなさそう。
心なしか、
きのうより調子がよさそう。
ビールいっそうおいしそう。

・蕣のその清しさのあらまほし  野衾

砂糖水

 

・秋深し写しも刷りも敵わずや

先週でしたか、
NHKスペシャルで
血糖値スパイクなるものを特集してい、
高校大学と陸上部に所属していたわたしとしては、
‟スパイク”
に反応し、
最後まで番組を視聴。
陸上競技で走るときに履くスパイクの針は
靴底についていますが、
血糖値スパイクは、
血糖値の状態をグラフにしたとき、
スパイクの針が上に鋭く向かいます。
血糖値は、
平均値を測っているだけではだめで、
剣山のようなスパイクが
上にどれだけとびだすか、
その数値を測ることが肝要である。
血糖値スパイクが起きると、
血管がダメージを受け、
それが引き金となり恐ろしい病気をまねく、
おおよそそのような話だったかと。
番組内で指摘されてはいませんでしたが、
自分のことに当てはめてみると、
スポーツドリンク、栄養ドリンク、果物ジュース等々、
要するに、
糖分を含んだ液体を摂取する頻度が
割と高い気がし、
よーし、
砂糖水はもう飲まぬ!
と、
かたくこころに決め、
この一週間、
スポーツドリンクも栄養ドリンクも果物ジュースも
一切飲んでません。
やっぱり水、水、水だよなぁ。
(酒はちょこちょこ飲んでます)
いつまでつづくか。

・眉根寄せ眉毛引き抜く男あり  野衾

被祝カメレオン

 

・自社の本誤植三つほど秋の空

わたしの第一詩集(第二、第三、あるやなしや)
『カメレオン』を装丁してくださった
閒村俊一さんのお声がかりで、
神楽坂にある山形料理のお店「もー吉」にて一献。
閒村さん、佐々木幹郎さん、
わが社の岡田君、わたしの四人。
とにかくこのカメレオン、
敬愛する幹郎さんに
渾身の力を籠めぶつかった結実でありまして、
跋文は身に余る光栄であるところ、
閒村さんから、
この詩集は、
『マハーヴァギナ~』(この装丁も閒村さん)
があったから書けた詩集と感じた

うれしいコメントを賜り、
また、
話をするときの
閒村さんの目というものは、
120パーセントまったく子どもの目
をしており、
わたしはただ黙し
目を見、
閒村さん六十二、
わたしまもなく五十九でありますが、
初めて同士の子どもが
ぴょこんと一緒に遊んでる風。
心根のあたたかい
あったかい、
もっと遊んでいたい
ひとでありました。
幹郎さんは、
合唱団 響~Kyo~演奏会2016
「合唱オペラ【新作委嘱初演】中也!」
(11月27日[日]17時開演 すみだトリフォニーホール 大ホール)
の演出でご多用のさなか、
時間を割いてくださり
お越しくださいました。
このオペラ、
台本・演出ともに幹郎さん。
パンフレットに、
「戦争が近づく昭和初年から10年代の日本の狂気と笑気とエロス!
中原中也と太宰治が絡み合う悲喜劇。」
とあり、
今の日本の
すばらしくくだらない狂気と
いかにクロスし火花を散らすか見ものです。
これ、
何を措いても
観に、聴きにいかねばでしょう!

・波風の立たぬ日もあり鰯雲  野衾

白と赤

 

・秋澄むや草を鳴らして風がゆく

スタンダールは赤と黒ですが、
一昨日観た映画『淵に立つ』は白と赤が際立っていました。
刑期を終えてでてきた八坂のシャツは
白、
工場で働いているときのツナギも
白、
教会の牧師が着ているガウンは
白、
工場を営む鈴岡利雄の妻・章江が干すシーツは
白、
口紅は
赤、
夫婦の一人娘・蛍のピアノ発表会のドレス(章江の手縫い)は
赤、
八坂がツナギの下に着ているシャツは
赤、
最後に近いシーン、
橋の淵に立っている八坂のシャツは
赤、
ネタバレになるので書きませんが、
血は
赤。
ということで、
白と赤の映画でもありました。

・土壁を紫が這ふ秋黴雨  野衾