アブラゼミ

 

・群青の空に岩肌台風過

外を歩いていると、
あちこちで蟬の死骸を目にします。
出社時、
桜木町にある本町小学校横の路地に入ったとき、
日陰になったところに
アブラゼミが落ちていました。
羽の先がギザギザし、
まるで破れた蛇の目傘。
死んでいるのか
と思いましたが、
木にとまるような形で道にしがみ付いており、
なんとなく気になって、
抓んでみました。
蟻が三匹たかっていましたから、
ふっふっと
息を吹きかけ振り払うと、
死んでいる
とばかり思われた蟬が
鳴きはしないけれど、
ゆっくり脚を動かすではありませんか。
いやビックリ。
捨てるわけにもいかず、
ゆっくり歩いて
階段に差し掛かったところの藪の下に置きました。
ここなら蟻も嗅ぎつけないでしょう。
会社で一日仕事をし、
ひとの仕事もしましたが、
それよりアブラゼミ。
帰りがけに見たら、
居なくなっていました。
だれか持ち去ったか?
台風で吹き飛ばされたか?
消えたか?

・羽破れいのち今わのアブラゼミ  野衾