Archives : 7月, 2016

今が融けだす

 

・楽しくてひとりぽっちの夏が来る

道元は西暦1200年生まれですから、
いまから816年前、
計算しやすい。
朝、
道元の『正法眼蔵』を読んでいると、
たとえば行持、修行について言っている箇所など、
新井奥邃を初めて読んだときの
清々しさとでもいうのか、
清新の気に触れるような具合で、
ありがたく感じます。
96歳で亡くなった哲学者の森信三が、
『奥邃廣録』を
『正法眼蔵』のようなものか
と、
たしかどこかで触れていたはずと記憶しており、
いつか読もうと思っていたのが、
やっと実現した形。
本を読もう、
もっと本を読もうというとき、
本に封じ込められている今が、
何百年、
千年の時を超え、
ページを繰るほどに融けだしてき、
現在の今と過去の今が同期することは、
替えがたく
うれしく楽しくありがたい。

・梅雨明けて精いっぱいの雲がゆく  野衾

顔で採る!?

 

・物語いよよ始まる夏木立

半ば冗談だとは思いますが、
春風社は顔で採用しているのですか?
と、
このごろ数名の方に訊かれました。
そう問われると、
そうではない
と否定するのも気が引けるけれど、
かといって、
そうだよ
と開き直るのもどうかと思うし、
したがって、
今のところ、
美人ぞろいですね
の、
ほめ言葉としての質問と受け止めています。
「美人の方募集」
なんて広告出したら、
どっかからこっぴどく
とっちめられるんでしょうね。
「美しい方募集」
なら、
精神的なものも含めてすべて、
ということでOKか?
ダメか。

・むつと来る夏草刈りの匂ひかな  野衾

BGMの蟬

 

・休日の四時を過ぎたり端居かな

お、今日が鳴き始めか、
と思ったのも
束の間、
このごろは、
ふと立ち止まって、
蟬くんどうした? と意識して初めて、
ああ鳴いてる鳴いてる
と。
いつの間にやら
一つの環境になっているのでした。
こういうことって少なくないかもしれません。
中原中也の詩「羊の歌」

こんなくだりがありました。

それよ、私は私が感じ得なかつたことのために、
罰されて、死は来たるものと思ふゆゑ。

あゝ、その時私の仰向かんことを!
せめてその時、私も、すべてを感ずる者であらんことを!

・瓜かじり飛び散る汁や鼻の下  野衾

蚊と木魚

 

・はらぺことたらふくせわし蟬の腹

漱石の句に、

・叩かれて昼の蚊を吐く木魚かな

があり、

大田南畝の句に、

・叩かれて蚊を吐く昼の木魚かな

があります。

大田南畝の南畝は号で、
蜀山人も号。
たしか教科書で習ったような。
江戸時代の文人で、
漱石よりも前の時代のひとですから、
漱石は、
南畝の句を知っていて、
単語の並びをちょっと替えてみた
ぐらいのところでしょうか。
いまなら盗作と騒がれるでしょうね。
それはともかく。
どっちの句がいいかということになると、
わたしの好き嫌いのハカリは
南畝のほうへすこし
傾くかなぁ。
まぁ漱石のも悪くはないのですが…。
これは実地検分し
句の味を実証的に確かめるのが一番かと。
そこで、

・蚊を入れて叩いてみたき木魚かな  野衾

 

・かき氷あります江戸の暖簾かな

朝から蟬が鳴いていて、いよいよ夏本番。
一昨日だったか、
ずいぶんデカい声で鳴いてるなぁ
と思い、
窓に近づいて見上げたら、
ベランダの天井に張り付いているのでした。
だんだん腹をぷくーと膨らませたり、
平らにしたりしながら、
ミーンミーンミーンミーン。
写真を撮ろうとスマホを弄っているうちに、
どこかへ
飛んでってしまいました。
近くの階段では、
務めを終えた蟬が体を二つに割られ
死んでいました。

・草の香や蟬が鳴いてる鳴いてるよ  野衾

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三浦衛(みうら・まもる) 春風社代表にして自慢大王&悪ノリ大王。体調のいいときは自らを天才と称し、不調の折はちりあくたにも劣るヤツとしょんぼり。

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三浦衛の本


『カメレオン』
 三人ときどき声にならぬ声を洩らし/とろけ とろけ 唾までとばし/クヂるとナメるとネヂるとチョす…(「鳶」) 自在に色を変え、不意に突き刺さる、軽妙なことばの戯れ。秋田方言満載の詩集。本文は金属活字による活版印刷。


『マハーヴァギナまたは巫山の夢』
 三平佐世夫は、千一夜の夢うつつで女と戯れ、印度に旅し、睾丸を抜かれ、鰐を飼い、横浜を彷徨う。言語の崖っぷちを綱渡りする、めくるめく冒険。本文活版印刷に美麗造本を施した平成の大奇書。


『父のふるさと』
 父の目に映じた故郷の風土、ひと、くらし、農事を、愛惜をこめ描きだす。本文は金属活字による活版印刷。「身と蓋函」に納める。


『出版は風まかせ』
 横浜の出版社「春風社」社長が本づくりと会社経営にまつわるエピソードを豊富におりまぜ、創業から10年を振り返る。