Archives : 6月, 2016

厚い茄子

 

・蜘蛛の巣の雨の滴の地に落ちず

昼、野毛にある
なじみの店にイシバシと行きましたら、
女将さんが、
「きのう漬けたものですが、どうでしょう」
と言って、
茄子の漬物をくださいました。
女将さんの漬物は絶品で、
いついただいてもハズレ無し。
しゃきっとした茄子がほどよく漬かっており、
きゅっきゅっ
とする食感を楽しんでいるうちに、
あっという間に、
最後のひと切れになりました。
イシバシおもむろに、
また及び腰に、
「あのー、すこし厚いようですが…」
切り身の厚い最後の茄子を
自分が食べていいのか
と許可を欲しているようで、
その言い方があまりに可笑しく、
呵々大笑。
「いいよいいよ。食べたらいいじゃん!」
そこでイシバシ、
厚手の切り身をつまんで口中へ。
と、
「あら。口のなかで二つに割れた」
「バカ野郎、あはははは…。いまさらどうするんだよ」

・梅雨の中くっつきそうな傘が行く  野衾

ひとの手

 

・茎紅きミズを並べて友も居て

本は物なので、
頭で考えるだけではつくれません。
自分の手が必要だし、
多くは
ひとの手を借りなければなりません。
会社のひとの手もあるし、
外のひとの手もあります。
そもそも本には著者がいます。
ひとの手が
頭で考えたとおりに動けば
事は単純ですが、
じぶんの手だってじぶんを裏切ることがあり、
まして他人の手となると、
こちらが思うように、
願うように
動いてくれることはありえない、
と、
ひとまず考えたほうがよさそうです。
会社で若いひとを見ながら、
物をつくるには、
ひとの手を
じぶんの手として使うことが欠かせない
と改めて思い知らされます。
がんばれい!

・ふるさとの窓の灯りやミズタタキ  野衾

氷っこ

 

・まな板に恨みなけれどミズタタキ

秋田では
いろんなものに「こ」を付けてよぶわけで、
氷も氷っこ。
氷を氷っこと呼称するだけで
かわいいというか、
いとおしいというか。
きのうは、
ビールの代わりに、
水に氷っこを入れて晩酌としました。
アイスコーヒーに、
ただの水にでも、
氷でなく氷っこを入れて飲むと美味しく感じるから
不思議。
だまされたと思って、
みなさんもぜひ氷っこを。
ぶっかき氷の場合だと、
ぶっかき氷っこ(ぶっかきごおりっこ)
となって、
やんちゃな男の子みたい。
ですが、
ぶっかき氷っことは言いません。

・叩くたび山の木霊のミズタタキ  野衾

しきらどした

 

・嘴太やお前も傘が欲しいのか

クマを避け、
ピッピを鳴らしながら採ったというミズが先週末とどき、
つぶしてたたいて刻んでから、
炊き立てのご飯にのせていただきました。
んっめー!!
こでらえねー!!
さっそく秋田に電話。
父も母も満足気。
ミズ採りの日、
腰を痛がる母は、
クルマのなかで待機していたのかと思いきや、
語気強く否定されました。
「なだど。おいも採ったたでゃ」
(注:なにを言っているの。わたしも採ったんだよ)
クマに襲われず家に帰ってきたら、
首のあたりに違和感を感じ、
手をやったら
ヒルが張り付いていたのだとか。
でもたいしたことはなかったそうです。

そこで一句、

山よりの清きこころのミズを食ぶ

おかげで、
こころもからだもきれいさっぱり、
すっきりとしました。
秋田ではこういう感じを、
しきらどしたな!
「し」の発音が標準語とちがって、
歯の近くに舌をもってきて発音します。
ではどうぞ。
しきらどしたな!
はい、よくできました。

・閑としてアシダカグモの居座れり  野衾

アイスコーヒー

 

・ゴミ網の驚き貌の守宮かな

このごろわたしのいちばんは、
手作りアイスコーヒー。
豆を挽き、
サイフォンでコーヒーを淹れるところまではいっしょ。
ビールジョッキに前もって
ぶっかいた氷っこ
(標準語では氷。秋田で氷っこ)
を入れておき、
淹れたコーヒーを
氷っこの上からじゃーと注いだら出来上がり。
いたって簡単。
これ飲んだら、
缶コーヒーなんて飲めねーよ、
飲むけど。
北鎌倉駅そば儀平の
かりんと饅頭なんか添えたら、
そりゃもう最高!

・雨やんで網をねぐらの守宮かな  野衾

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三浦衛(みうら・まもる) 春風社代表にして自慢大王&悪ノリ大王。体調のいいときは自らを天才と称し、不調の折はちりあくたにも劣るヤツとしょんぼり。

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三浦衛の本


『カメレオン』
 三人ときどき声にならぬ声を洩らし/とろけ とろけ 唾までとばし/クヂるとナメるとネヂるとチョす…(「鳶」) 自在に色を変え、不意に突き刺さる、軽妙なことばの戯れ。秋田方言満載の詩集。本文は金属活字による活版印刷。


『マハーヴァギナまたは巫山の夢』
 三平佐世夫は、千一夜の夢うつつで女と戯れ、印度に旅し、睾丸を抜かれ、鰐を飼い、横浜を彷徨う。言語の崖っぷちを綱渡りする、めくるめく冒険。本文活版印刷に美麗造本を施した平成の大奇書。


『父のふるさと』
 父の目に映じた故郷の風土、ひと、くらし、農事を、愛惜をこめ描きだす。本文は金属活字による活版印刷。「身と蓋函」に納める。


『出版は風まかせ』
 横浜の出版社「春風社」社長が本づくりと会社経営にまつわるエピソードを豊富におりまぜ、創業から10年を振り返る。