しおり

 

・草も木も黙して聴けと告げてをり

がっちりした上製本には布製の紐がついていて、
これを「しおり」
または「スピン」といいます。
小ぶりの文庫本でも、
しおりのついているものが昔はありました。
文庫本や
ソフトカバーの本の場合、
布製のものでなく、
紙のしおりが挟んであります。
しおりのない本もあります。
古い本を読んでいて、
ページとページの間に挟まれ、
くねっとやわらかく佇んでいるしおりに会えば、
ホッと息が抜け、
文字を読むのを少し休み
しおりのたたずまいを楽しみます。
古い古い本になると、
時間がそこに凝固してしまったかのように、
しおりの染め色がページにうつり、
いま太陽の光を浴びて、
うっすら、
ひとの影のように見えたり。
ああ、
これが本だよ。
夏休みの宿題で仕方なく読んでいた本でも、
しおりに出くわすと、
そこでずっと待っていてくれたような、
そんな気さえしたものでした。

・五月雨や淋しき心待つ心  野衾