革の匂い

 

・田に充つる水に誘はる仕事かな

きのうは病院へ行く日。
そうだ病院へ行こう
って、
武田鉄矢が歌ってたな。
♪手遅れになるその前に~
ってか。
風邪をもらうのを避けるため、
いつも持ち歩く鞄のポケットに入れておいたマスクを取り出し
顔にかけるや、
革の匂いがふわり。
ああこの匂い。
グローブの匂いだああ!
小学生のとき、
親に初めてグローブを買ってもらったときの
わくわくどきどきした興奮がよみがえり、
どっと押し寄せ、
もはや病院どころではありません。
ま、
行きましたけど。
左投げ右打ちのわたしは、
左利き用のグローブで、
右手にグローブをはめて、
左手をグーにし
グローブのポケットをパンパン叩いた。
ああ、
あんときのあの興奮!
イチローも松井も、
子どものとききっと感じたに違いない。
いやはや。
しばらく忘れていました。
と、
さて病院のほうはといえば、
検査はとくに問題なく。
どうもどうもで。

・トゥリュリュリュリュ闇蒼く成し蟇蛙  野衾

老夫

 

・水仙の花に珈琲注ぎたし

杜甫の詩を読んでいると「老夫」ということばがでてきます。
老いたおじさん、
だれのことかと思いきや、
杜甫自身。
いくつで
自分のことを
老いたおじさん呼ばわりしているのかといえば、
ななんと四十代。
へ~!!
四十代で老夫なら
五十代は老老夫か、
六十代は老老老夫で三老夫、
なんて。
八世紀中国の時代状況もあるでしょうが、
詩のなかにその文字が出てくると、
やはり目がとまります。
ときどき見ているブログがありまして、
それを書いているのはおそらく六十代の方と思われますが、
あるとき、
「ゆえあって射精をした。かつては毎日だった」
と書かれてあり、
爆笑。
また、
杜甫の詩を読みながら、
竹内敏晴の『老いのイニシエーション』
を思い出しました。
舞踏の土方巽が57歳、
活元の野口晴哉が64歳
で亡くなったことを踏まえ、
生のエネルギーの放出が六十を境にして変ることを、
みずからの体験ともあわせ
たしか記述していたはず。
さて、
ちゃんと越えられるだろうか。
なんか心もとないなあ。
越えるための棒があるといいのですが。
って、
棒高跳び!?

・軽重を計り地球の蛙かな  野衾

連休万歳

 

・渓水や緑を割いて新たなり

世に習い十連休。
いやあ、
骨の髄まできましたね。
すっからかん!
山菜は食べただけでなく
(銀ダラの代わりのメロと煮たアイノコ堪能)
採りもし、
魚は、
川の水がまだ冷たく
釣れなかったけど、
久しぶりの寒風山へは
弟がクルマをだしてくれ、
叔父や叔母と秋田弁フル回転で
たっぷりしゃべれたし、
三か月に一回十連休だといいのになあ。
国連でそう決めてくれたら、
ならずもの国家のほかは従うだろうに、
夢の夢のまた夢か。
横浜に帰ってきたら
近くの林で鶯が、
ああ帰ってきたかと
なんともいい声を聴かせてくれ、
畏友鉄信さんの句
〈 ウグイスも練習すれば上手くなる 〉
を思い出しました。
と、
さて、
本日より営業再開。
まずは「春風新聞」春夏号が届くはず。
季節はまさに新緑。
ひかりの粒をいただきながらぼちぼちいきます。
後半もどうぞよろしく。

・新緑や霊気深深声すなり  野衾