蛾君

 

・葉桜や出勤前のひとりをり

朝、家をでてドアに鍵をかけようとしたら、
すぐ横の壁に、
茶色い蓑虫のようなる、
ゴミか
とも一瞬思いましたが、
小さな蛾が居りました。
ブチッとやるのもはばかられ、
そのうち飛んでいくだろうと思って、
触れもせず。
一日、
ああでこうで
ああでこうでああでこうでして、
夜、
八時過ぎに家に着き、
家人きょうは和コーデの日、
ドアの鍵穴に鍵を差そうとしたところ、
あら、
けさの蛾君ではありませんか。
まったく同じ場所に身じろぎもせずに。
へ~。
居たの?
あれからずっと?
なにしてた?
ちょっと感動。
で、
指でチョイ。
あ、
驚いたかっ!
勢いよく飛んで
ひとつ舞いふたつ舞いしてみっつよつ。
天井の灯りへと。
分からないけどよかった。

・葉桜やかつて暫しも立ち止まらず  野衾