霊感タクシー

 

・ベランダに春を届けて嵐過ぐ

おとといのことですが、
体調悪しくタクシーに乗りましたら、
運転手が、
問わず語りにいろいろ怖い体験を話してくれました。
そういう話が好きなんだな
と思ったものですから、
サービス精神の旺盛なわたしとしては、
体調悪いにもかかわらず、
黙って聞いているわけにもゆかず、
かつて関西出張の折に泊まったホテルで、
深夜、
天井から下がっていた
ロープを見たエピソードを披露するや、
運転手、
運転中にもかかわらず、
わたしのほうを振り向き
目をきらきら~ん!
おいおい、
危ねーよ、
ちゃんと前を向いて走ってよ。
それからも、
金縛りにしょっちゅうかかっていたのが、
引越しをしたらとたんにかからなくなったとか、
とにかく、
そういったたぐいの話が
やたら好きな運転手で、
この運転手、
運転手というのは仮の姿で、
ほんとは人でなく
霊なのでは、
なんて思いました。
そういえば…
てか。

・鶯や嵐のなかのいのちかな  野衾

とどりとっぺね

 

・野毛坂を花道にして桜かな

落ち着きがない、まとまりがない、筋が通らないことを
秋田では、
「とどりね」「とどりとっぺね」といいます。
わたしのいまの体の状態がまさにそれ、
とどりとっぺね!
自分の体なのに、
ザワザワモサモサバラバラネバネバで。
熱もある。
集中できない。
呆呆。
風邪かな。

・ベンチあり図書館横の桜かな  野衾

忘忘

 

・桜散る空に羽抜けの烏かな

今度は、
取っ手のところがアヒルの頭を模したようなる傘を失くしまして、
馬鹿かと。
いや、自分に。
保土ヶ谷駅のホームにある蕎麦屋で失くしたので、
翌朝さっそく行ってみました。
「緑色の傘を忘れていませんでしたでしょうか」
「これですか?」
「いえ。取っ手がアヒルの頭の形をしている緑色の傘です。
ここに忘れたと思うのです」
「そうおっしゃられても…」
「そうですか。失礼しました」
失くしたのは夕方で、
店のひとが違っていましたから、
すごすごとホームのいつも乗る場所へ戻りました。
ふつうに一日仕事をし、
帰りがけ、
やっぱり諦めきれずに
また訪ねたら、
傘を失くしたときに店に立っていたおばさんで、
その旨を話したところ、
おばさんも
わたしの顔を憶えてくれていて、
気の毒そうに、
朝見せられた緑色の傘を持ち出してきて、
「これのほかに緑色の傘はございませんね」
「そうですか。ぼくの勘違いだったかもしれません。失礼しました」
もうもう。
体は鉄のナマコのような状態で。
階段をやっと上り終えて家のドアを開けたら、
傘たてに見たことのある緑色の傘。
取っ手がアヒルの頭の形をした…。
ななな、
なぜここに!?
忘れたと思い込んだことも驚きなら、
傘たてにちゃんと置いたことも
忘れてしまっていたということになります。
しかも朝、家を出るとき、
なぜそこにあることに気づかなかった!?
いやはや。
馬、馬鹿かと。

・入学式校舎裏手に人も無し  野衾

さくら

 

・ビブレ前振り振りダンス萌えダンス

桜木町界隈、大岡川沿いはさくらが満開です。
雨が降ったあとのせいか、
幹は黒々と、
空は快晴、
そこに薄いピンクのさくらかな、
で、
いやいや、
日本に生まれてよかったー、
芭蕉先生にならい、
さまざまなこと思い出してみたり、
さくらひらひら舞い降りて、
ゆれる想いもありまして、
でも花より中華、
海鮮焼き蕎麦は周さんの生香園で決まり。
ホタテにアワビにエビにイカ、
帰りは馬車道をぬけ、
ランドマークを右手に見ながら海風に吹かれ紅葉坂へ。

・横浜駅交番角の蕎麦啜る  野衾

まちづくり

 

・父と子とユニフォーム着て花万朶

『今、田村明を読む』の刊行記念とあわせたイベント、
シンポジウム「田村明からのメッセージ」
に参加のため県民ホールへ。
田村明は、
飛鳥田一雄(あすかた・いちを)横浜市長のもとで、
みなとみらい21構想、
金沢沖の埋め立て、
港北ニュータウン、
高速道路、
地下鉄の整備、
ベイブリッジ建設
の六大事業をすすめた中心人物。
2010年1月25日に亡くなっていますが、
田村さんがなした「まちづくり」の息吹は、
まちにもひとにも
確実に受け継がれていると分かる、
すばらしい会でした。
昵懇にしておられた方がかつて田村さんを祝うパーティで、
田村さんは現代の弘法大師だと語ったエピソードを披露、
そのこころは、
弘法大師は杖を下ろすとそこに清水が湧いたが、
田村さんの赴くところそこにまちができる。
それを聞いた田村さん、
「きみ、なかなかいいこと言うね」
田村さんは、
内村鑑三がはじめた無教会主義のクリスチャンで、
『後世への最大遺物』は田村さんの愛読書だったそうです。

・花曇りコーヒー店は閉じてをり  野衾

ひとり花見

 

・掃部山港見下ろす桜かな

太宗庵で蕎麦を食べていて、
ふと思いつきました。
そうだ掃部山。
掃部山と書いて、かもんやま。
掃部山には横浜開港にかかわった井伊直弼の像が建っていますが、
井伊家が代々掃部頭(かもんのかみ)に就いており、
直弼もその職掌にあったことに因んでの名称とか。
天気も良し。
よし!
十分ほど余分に歩けば、
十分に桜を楽しめます。
てくてくと。
ベンチをテーブル代わりにして弁当を広げるアラフォーたち。
それを見、
なるほど上手いことやりおるわい、
と前期高齢者たち。
アラカンのわたしは遠巻きに。
桜は五分咲き。
ベンチテーブル代わりはこちらにも。
男性サラリーマン五人。
マンだから男性か。
馬から落馬して骨折った。
山を下りれば横浜能楽堂。
「ただいま二階席から舞台が見られます」(無料)
ん!
見るか?
見ないか?
見ない。
そんなには時間がない。
いや公演を見るわけでなし舞台だけだから。
見るか?
見ないか?
見ない。
頭のてっぺんが薄くなりかけた女性が
背をのけぞらせ、
桜を撮っています。

・一億総活躍社会四月馬鹿  野衾