のどじまんTHEワールド!

 

・鶯やそこまで古き本を閉づ

テレビを点けてやっていれば必ず見るのが、コレ。
今回は、
キルギスから来られた
グルム・カシィムバエヴァさんが優勝。
予選で歌った「元気を出して」
決勝で歌った「涙そうそう」
審査員の何人かも目を赤くしていましたが、
わたしはテレビの前で泣いていました。
まずことばがていねい。
彼女たちにとっては
日本語は外国語ですから当然かもしれませんが、
ことばをいつくしむように発し、
それにこころがのってくるとでも言いますか。
いやあ、
泣きますよあれは。
昨年秋のインドネシア代表、
ファティマ・ザハラトゥンニサさんが歌った
「ブルーバード」
にもぶったまげましたが、
今回のグルムさんも負けていません。
感動があるし。
ことばが沁みてくるもんなあ。
いやはや。
どちらもYouTubeで見ることができます。

・保土ヶ谷の宿をつつみて朧かな  野衾

 

・朝ぼらけ平安けふより春来る

このごろ酒が美味しくなりまして
ビールでも 日本酒でも 焼酎でも ウイスキーでも
若いときは
難しい本を読み
陰でエロ本もしっかりと
かっこうつけて深酒し遅くまで起き
虎になってみたり
人生と人間に追いつくフリを

一日の仕事を終え
家人友人知人らと
けふあったことを
あまり悪口を交えずに
すこし話をし
おいしいツマミでちょこっと飲むのが愉快
二日酔いは嫌い

ああ今日も
いちにち終った~
教訓ねーし なんもねー
朝起きして読む本の計画はあるけれど
いくら読んでもキリはなく
予定は未定
いまさらと

世は春
世はまさに春
鎌倉に行ってみよ
めんどうくさくなったら止め

・瞑りても花と音とが交叉せり  野衾

昭和の春

 

・停留所春を眺めてバスを待つ

shumpu photo storyが春仕様になりました。
撮影は橋本照嵩さん。
弊社ホームページのトップ、
いちばん上、
横長の写真がそれです。
1980年ごろの写真が主ですから、
いまから36年前のこと。
フィルムですから色もらしく褪せていますが、
着ている物、髪型、帽子、祭り、弁当を食べる人びとの姿、頬かぶりの手拭、
明るく開放的な笑顔まで、
どれもなんとなく昭和だなぁと。
どの写真の空間に、
渥美清の寅さんがでてきてもおかしくない。
ぴたりと収まる気がします。
てことは、
寅さんも、
昭和を旅し生きた人だったのでしょう。
遠くなるのは
明治ばかりではなく、
どの時代もやがて遠くなり、
ふるさとのごとく、
思ってみたり、
悲しくうたってみたりしますが、
子を思う親のこころ、
弟子を思う師のこころは、
時代に関係なく
変らずあると思わされます。

・雨を踏む音も華やぐ春となる  野衾

クスリになり毒になる

 

・夢のなか欠くるものなし春野かな

中条省平さんは学習院大学の教授ですが、
わたしにとりましては、
安原顯さんが始めた創作学校の
恩師であり、
それがご縁で
今もお付き合いいただいております。
2003年に『名刀中条スパパパパン!!!』
2005年に『ただしいジャズ入門』を弊社から上梓、
現在『春風新聞』に
「翻訳ピンチ!」のコラムを継続ご執筆中。
その中条さん、
小説も音楽も映画もマンガも好きで、
しかもかなり好きで、
加うるに中条さんの紹介と評論は、
もはやひとつの芸といってよく、
したがいまして、
紹介されているものを、
読まずに聴かずに見ずに済ますことは甚だ困難になります。
前置きが長くなりました。
2015年に幻冬舎から刊行された
中条さんの『マンガの論点』新書版776ページ、
読み始めのころ、
ここで一度紹介したと記憶していますが、
読んでいると、
胸が熱くなりアタマが沸騰してきて、
つい、
パソコンを立ち上げ、
紹介されているマンガをポチッとクリックしカートに入れてしまうことに。
この本を読んで買ったマンガの数は相当。
ですので一気に読むのは危険です。
まさにおススメ上手!
なのですが、
中条さんにとりまして、
小説も音楽も映画もマンガも、
どうやら、
豊かで生々しいロクでもないこの世界に触れるための
外せないものであるようで、
(「まえがき」でそのことに触れています)
世界に触れたいとの熱が
文章に鋭く深くこめられ、
こもり、
それが読む側に真っ直ぐ伝ぱしてくるのでしょう。
ただ、
そういうクスリにもなり
毒にもなる文章ですから、
熱に浮かされヘロヘロにならぬよう
注意が必要です。

・春暁の床のうちにて雨をきく  野衾

キーンさんの日本文学史

 

・目覚めてもきのふ起きずにけふ起きる

小西甚一さんの浩瀚な日本文藝史を読んだら、
キーンさんのも読みたくなりまして、
文庫版もあるから
車中にちょうどよく、
さて、
と思って読み始めたら、
これがおもしろいのおもしろくないの。
どっちなんだっ、
てか。
この面白さをどう喩えたらいいのか分かりません
が、
たとえば、
地球にいて地球を見るしかなかったのが、
科学が発達し、
縁あって素人が宇宙船に乗り込み、
宇宙から初めて地球を見てみた
的な面白さ
とでもいうのか。
また、
日本人は季節の移ろいを、
ほかのどの国のひとよりも敏感にとらえるのではないか
なんて言われると、
それが日本人によってだったら、
は~そうすか、
あなた世界中を回ってきたとでも言うんスか、
てなもんですが、
キーンさんからだと、
そうなんですかやっぱり、
と、
なんだか嬉しくなってしまいます。
今ではキーンさん
日本人ですが。
漢字だと鬼怒鳴門(きーん どなるど)だそう。
怒鳴ると鬼?
文庫で十八冊、
そうとう楽しめます。

・春眠の蜜なる味の夢うつつ  野衾

喜博と安二郎

 

・雛祭りおさげ髪の娘いま何処

喜博は教育家。
姓は斎藤。
安二郎は映画監督。
姓は小津。
仕事で喜博に関する論考を読んでいたら、
原稿の論旨とは別に、
ふと、
このひと、
安二郎に似ていると思った。
朔太郎がバスター・キートンに似ているようなものか。
ちがうか。
どこがどう似ているか分からないけれど、
ひとの見方寄り添い方
とでもいうのか。
まぁ直感。
ネットで調べたら、
ふたりを並べて論じているものはなさそうなので、
少し時間をかけゆっくり考えてみたい。
片や教育、
片や映画、
相容れない気もするけれど、
そうでもないかも。
具体的なモノのつかみ方、
具体から抽象へ、
イデアへと向かうベクトル、
幻視していたものが共通だったような、
これまた直感。
問いを問うのは楽しい、
生きられる時間。

・鎌倉や雛を飾りし古き家  野衾

明るさにつられ

 

・電線の椋鳥震ふ余寒かな

三月に入り、
朝の日差しがバッと明るさを増した気がし、
あまりむくむくでなく、
むく、
ぐらいな感じで出かけたところ、
風の冷たいこと冷たいこと。
いや~参りました。
毛皮のコートがほしいぐらい。
昼、
蕎麦屋で温かい天ぷら蕎麦
を食べた後、
風をよけながら
近くのコンビにまで歩き、
はい、
ここで問題です。
わたしはなにを買ったでしょう?
正解!
そうです。
ホカロン貼るタイプ。
夕刻から夜にかけますます寒くなりまして、
貼っててよかった!
貼ってなかったら、
寒くて死ぬとこだった、ほんと。

・蕎麦屋にてテレビに見入る寒と温  野衾