早春賦

 

・鶯の声にひかれて垣根かな

「春は名のみの風の寒さや」で始まる早春賦。
ならったのは中学生でしたかね。
音楽担当は小林恒子先生。
ならった瞬間好きになりました。
音楽の先生っていいなあ。
なんだか小難しい歌詞だなあと思いつつ、
しかし、
意味を追うほど賢しくなく、
意味そっちのけで大声で歌っていました。
「時にあらずと声も立てず」
とか
「さては時ぞと思うあやにく」
とか
「いかにせよとのこの頃か」
とか、
広い窓のある明るい音楽室で、
意味にあらずと声を立てていたわけです。
あの春も窓も今いずこ。
雪が融け
ぱんぱでぐなった(乾いて硬くなった)道を
買ってもらった新しい自転車で疾駆した空も無し。
小林先生も早くにお亡くなりになりました。
「春と聞かねば知らでありしを
聞けば急かるる胸の思い」
だあなあ。
いかにせよとのこの頃この頃。
歌だけ残って。
もうなんもいらない気もし、
すぐに変わるけど、
泣きたくなって来る。

・春の空ゴミ収集車浚ひけり  野衾