句を得る

 

・ひかりなのちび雪だるま会ひに来る

小西甚一先生の『俳句の世界』を読んでいると、
俳句を「つくる」でなく「よむ」でなく「ものす」でなく、
まして「ひねる」でなく、
「句を得る」という言い方がよくでてきます。

松尾芭蕉が得た句のひとつに、

在明(ありあけ)も晦日(みそか)に近し餅(もち)の音

があります。

小西先生、
はじめはあんまり大した句だと感じていなかったそうですが、
加藤楸邨がしばしばこの句を褒めるので、
それほどでもないぜ
と楸邨をやり込めるつもりで何度も読んでいたら、
不思議にだんだんだんだん良くなってきて、
こりゃやっぱり名句だ
と認めることになったのだとか。
小西先生にしてそうならば、
凡人のわれわれは推して知るべし。

在明も晦日に近し餅の音

ふむ。

・くたびれて精一杯の春となる  野衾