桜木町の片隅で

 

・杜の都聖歌歌いし日も遠く

むしゃくしゃした日の帰り、
JR桜木町駅頭では、
警察から一時追い払われたような形になっていた
ななめキャップ姿の
“ビッグ・イシューおじさん”が
手製の看板を相棒に、
声を張り上げておりました。
「ごくろうさま、ごくろうさん。
わたくし桜木町の片隅で、
こうしてこの雑誌を売っておりますが、
この雑誌、
一見薄いぺらぺらの雑誌ではございますが、
中身は決してぺらぺらではございません。
日本は今まさに一触即発、
たいへんな時代に差し掛かっているのでございまして…」
録音したわけでも、
手帳にメモしたわけでもありませんが、
おおよそそのような調子の口上で、
リズミカルな日本語が耳に心地よく響きます。
金言格言四字熟語が程よくちりばめられ、
寅さんの啖呵売を彷彿とさせます。
とくに、
「桜木町の片隅で」の文句にいつもヤラれます。
「桜木町の片隅で」
いいなあ。
ひどく疲れていても、
どんなにむしゃくしゃしていても、
この文句の破壊力は
なんとも凄まじく、
ついうっかり笑ってしまいます。
神様は、
どこで御手を差し伸べていて下さるか分かりません。
きょうはクリスマス。

・クリスマスチキン食う日かそうじゃない  野衾