魚屋の息子

 

・冬鳩やいまキリストの受胎せり

今年の読書のいちばんは、
なんといっても
小西甚一『日本文藝史』全五巻でありますが、
小西先生の生家が
伊勢の魚屋だったということが
またなんともおもしろく。
古代から現代までの日本文藝を
豊かな海と見たとき、
先生はそこから大魚鮮魚を釣り上げて、
絶妙の包丁さばきで解体し、
その美味なるところを
わたしたちに供してくれたともいえるでしょう。
小西先生の書く本は
どれも、
実に大らかで、のびやかで気持ちがいい。
このジャンルの本を読み、
こういう感想を持つことはまずありません。
わたしが知らないだけなのでしょう。
しかし、
その感触が連想を「マルコによる福音書」へと誘います。
第一章一六節
「さて、イエスはガリラヤの海べを歩いて行かれ、シモンとシモンの兄弟アンデレとが、
海で網を打っているのをごらんになった。彼らは猟師であった。
イエスは彼らに言われた、
『わたしについてきなさい。あなたがたを、人間をとる猟師にしてあげよう』
すると、彼らはすぐに網を捨てて、イエスに従った」

橋本照嵩『石巻かほく』紙上写真展
の四十一回目が掲載されました。
コチラです。

・冬枯れの道に小さき箱ひとつ  野衾