耳たぶの思い出

 

・冬の雨止まずしてほか恨み無し

きのうの昼時、
食事に行きましたら、
ほんの二メートルばかり離れたテーブルについた男性の
耳たぶが異様に大きくて、
ついつい見とれてしまいました。
大きいな。
大きいな。
どうしてそんなに大きいの。
アフリカ象の耳みたい。
ははは。
ん!?
あら?
そうか。
そうだよな。
そんな大きい耳ってありえない。
肌色に近い大きなイヤリングをしているのでした。
ひょっとして、
福耳に見せたいのかな。
それにしても、
わたしの視力、
だいぶ衰えたようです。
そういえば、
むかし、
東京の出版社にいたころ、
似たようなことがありました。
ふだんメガネを掛けているパートのMさんが、
その日どういうわけか
メガネをしていなくて、
同じくパートで働いているOさんを
目ざとく見かけ、
「あら、ずいぶん大きなイヤリングをしているのね」
と、
Oさんに近づき
耳をつままんばかりにしたところ、
「あら。イヤリングじゃなかった! まあ、ずいぶん大きな耳だこと!」
Oさん恥ずかしそうに顔中真っ赤になりました。
今まで髪の毛に隠れていた耳が、
ショートカットにしたがために、
外に現れ出てしまったのを、
メガネを掛けずぼんやりしか見えていないMさんに、
運悪く見つかってしまったのでした。

・木の葉降りまたも降りしてまたも降る  野衾