分厚い本

 

・湯を出でて暗き家路や虫集く

子どもの頃から、
どちらかというと分厚い本が好きでした。
農家のこととて、
本のない環境でしたから、
余計にそういう好悪が育まれたのかもしれません。
初めて買った分厚い本は、
岩波書店の広辞苑。
分不相応なぐらい厚かった。
重かった。
机の上でページを開くだけで、
少しえらくなった気がしたものです。
高校に入ったら、
祖母が、
むかし勤めていた旅館の女将さんから
二宮金次郎像をもらってきたので、
もっとえらくならねばいけない
気がして、
本を読みました。
薄い本より、
分厚い本のほうが
えらくなりやすい気がした。
さて、
これから読もうとしている分厚い本は、
小西甚一の『日本文藝史 Ⅴ』1142ページ。
これは分厚い!
ふつうにポンと立ちますからね。
ほら。
しかし、
これを読むためには、
Ⅰ~Ⅳを読む必要がありまして、
まずそちらから
始めなければいけませんが、
そちらはどの巻もそれほど分厚くありません。
Ⅴのみ千ページを超えます。
最終巻のこのボリューム、
しっかり勉強しなさい
と気合を入れられているような、
そんな分厚さです。

・露天風呂裸の腹に秋の雨  野衾