真夜中の雄叫び

 

・出航の船の霧笛や秋を告ぐ

句会の夢を見ました。
野外でしたから吟行ですかね。
冨士眞奈美さんや吉行和子さんもそこにいて、
だれもだれも、
いっしょうけいめいつくっています。
と、
どこからか、
見知らぬ鉤鼻のいかにもな老婆が現れました。
フードをかぶり、
ごつごつした杖を突いていたりして。
あ!
魔法使いのおばあさん!
おばあさん、
苦吟しているわたしのほうへ
まっすぐゆっくり向かってきます。
いやだなあ! わずらわしいなあ!(←こころの声)
さらに近づいてきて、
木の枝のようなる指で
わたしの顔を指し、
「そんなに眉間に皺を寄せてもいい句はつくれまいて。
ふぉっふぉっふぉっふぉっふぉっ…」
笑い方まで
魔法使いの定石どおり。
もうもうわたしは頭にきて、
立ち上がり、
ドゥア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛…」と大音声。
声の大きさだったら、
魔法使いにだって負けはしない。
ドゥア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛…
「どうしたの? だいじょうぶ? うなされているよ!」
眼が覚めました。
となりで寝ていた家人が
怪訝そうにわたしを見ています。
「怖い夢でも見たの?」
ふむ。
あれを怖い夢といっていいものか。
魔法使いのようなる老婆を追い払うため、
雄叫びを発したのは
わたしであって。
「いや。すまない。スミマセン。寝ましょう」

・ゆっくりと石の階段秋黴雨  野衾