NHK-FM

 

・上天の夏を追い越す秋の風

社内ではボリュームを落として、
ごく小さく
音楽が流れていまして、
午前中はクラシック、
午後はジャズ、ロック、ポップスなどですが、
このごろは午後、
NHK-FMにすることが多くなりました。
(一時間ほどのCDでも、
毎度毎度だとなかなか。
レコードの時代ならたいへんです)
するとさすがNHK。
もう、なんでもござれ。
クラシック、ジャズ、ロック、ポップスは朝飯前。
AKB48から演歌まで。
テクノから懐メロまで。
環境音楽からアフリカの民族音楽まで。
いや楽しいのなんの。
哲学の原稿を読んでいるとき、
島倉千代子の「東京だよおっ母さん」
とか、
村田英雄の「王将」
とか、
春日八郎の「別れの一本杉」
が流れてくると、
いつにも増して、
深~~~い意味がこめられているような、
そんな気持ちになります。
さて今日はどんな音楽がかかるやら。

写真は秋田のなるちゃん提供。
薔薇の花弁の下の雨蛙。

・秋澄むや吾の写真に驚かる  野衾

けものけ展

 

・歳時記をめくりきのふの季をうたふ

長野亮之介は友人の画家。
その長野さんから葉書が来ました。
長野亮之介の絵しごと けものけ展
のご案内。

今月19日(土)から27日(日)の
12:00~19:00(日曜日は17:00まで)
9月23日(水・祝)は定休
場所は、
千駄ヶ谷駅から徒歩8分のGALLERY HIPPO

長野さんとももう四半世紀になります。
春風社のロゴ(ツバメのマーク)は長野さんに作ってもらったもの。
ホームページを立ち上げたとき、
絵入りのコラムも書いてもらいました。
昨年、
葛飾区柴又にある帝釈天題経寺を訪ねたとき、
境内でいろいろ販売しているなかに、
見たことのあるTシャツがあると思ったら、
長野さんの
ハナマガリ鮭のTシャツでした。
思わず、
売っているおねえさんに、
「これ描いたの、ぼくの友人です」
おねえさん「はあ…」
このごろは二人とも忙しくて
なかなか会えませんが、
またそのうち会えるでしょう。
葉書に、
「「けものけ」はケモノ(獣)とモノノケ(物の怪)を合わせた造語」
とあります。
「動物だけでなく、ヒト以外のあらゆる生き物と怪異なモノは、
人には計り知れない存在という意味で表裏一体といえる」
とも。
まったくだ。
長野さん、
八匹も猫を飼ってるんだって!

・秋の空刻一刻の変化《へんげ》かな  野衾

スーパー爺

 

・ゑのころや停車場に立つひともなし

しのぎやすい季節になりましたので、
近所のまるちゃんを誘い、
家人と三人で、
英連邦戦死者墓地から児童遊園を散策。
墓地は、
日本の土地でありながら、
作り手が変わると
こうも違うかとびっくり。
墓石は、
日本のものとは異なり、
大き目の弁当箱のような感じです。
したがいまして、
視界を遮るものがなく、
墓地全体が整然とし
静かな空気を湛えています。
そこから十分ほど歩くと児童遊園。
セブンイレブンで買ってきたおにぎりと
カップ味噌汁でお昼に。
お湯だけ家で沸かし水筒に入れてきました。
風を浴び空を見上げ
俳句などつくって遊んでいると、
妙に体の締まった爺さんが
ランニングをしたり、
鉄棒にぶら下がり、
ひょいひょい懸垂をしたりしています。
かつてテレビコマーシャルで、
大車輪をするおじいさんを見たことがありますが、
あれはこの人だったのでは?
と思えるぐらい、
身が軽そうで、
キレがあり、
これは只者ではないな
と三人、
目をしばたかせ。
もっと見ていたかったのですが、
きりがありませんから
ほどほどところで切り上げ家路につきました。

・秋の野をスーパー爺回りけり  野衾

抽斗

 

・道逸れて風にしな垂る芒かな

会社の角に置いてある
キャビネットを片付けていたら、
抽斗のなかから
古い写真がひょいと現れ、
ハッとしたり
ギョッとしたり。
一昨日お目にかかった
O先生の写真もありました。
いつも若々しくいらっしゃるので、
年をとらないみたいだなぁ
と思っていますが、
十数年前に撮った写真を見ると、
あたりまえですが、
やはり今とは違っています。
ある大学の女子学生が社を訪ねてきたとき、
みんなでカラオケに行き
歌っている写真もでてきました。
専務イシバシも武家屋敷もわたしも若い。
女子学生はその後、
大学院に行き、
今はフランスにいて、
ヨーロッパ中世美術の研究に余念がありません。
抽斗は、
物をしまうときは、
何の気なしに
ぽんぽん入れて置くだけですが、
ときが静かに降り積もり、
やがて
しまった物を
忘れてしまう頃おい、
いつの間にやら
玉手箱に変化発展を遂げ、
こちらはだれもみな
例外なく、
浦島太郎になっていくようです。

・台風圏酢橘持ちたるひと来る  野衾

横浜高島屋

 

・野分中傘の骨骨怒髪天

いつ行っても気持ちいいのが横浜高島屋。
気持ち悪いのが貧乏ゆすり。
待ち合わせの時刻より少し早く着いたので、
正面玄関を入ったところのソファに腰掛けたところ、
となりの爺さんが
一定の間を置いて激しく貧乏ゆすり。
文庫本に目を落としていた視界にそれが入り、
ちらと顔を覗くと、
眉毛も白髪のおとなしそうな爺さんで。
それなのに、
貧乏ゆすりは、
まるで夜露死苦を飛ばす不良少年並み。
ひざ下が別の生き物。
やがて老妻登場し、
やおら立ち上がりいっしょに外へ。
ははあ。
奥さんが買い物するのを待っていたのだな。
ほどなくO先生登場。
エスカレーターで六階へ。
降りた階にいた店員に
「資生堂パーラーどちらでしたっけ?」
笑顔で「はい。こちらです」
すぐに歩き出して案内してくれます。
「何度来ても覚えられなくてスミマセン」
「いえ。外はまだ降っていますか?」
「降ったり止んだりですね」
わたしが長靴を履き、
資料をビニール袋に入れているのを見ての言葉だったのでしょう。
この店の人は
どなたに限らず、
こういう対応をしてくれます。
行き先を尋ねると、
その場を動かずにいて
指先で方向を示すことをしません。
スッと体ごと動かし案内してくれます。
それがなんとも気持ちいい。

橋本照嵩『石巻かほく』紙上写真展
の二十九回目が掲載されました。
コチラです。

・重なりて抜きつ抜かれつ野分雲  野衾

ある連想

 

・台風来蟷螂のごと身構えり

梅雨の時期よりも雨が降る今日このごろ。
地下道を歩いているわたしの目の前を
ショートカットの
痩せぎすの女性が歩いておりました。
歩くスピードがほぼいっしょ。
追い抜きもせず、
離されることもなく。
女性から二段離れて昇りエスカレーターに乗りました。
うなじが目の前にあります。
ん。
似ている。
たしかに似ています。
口に出しては言えないけれど、
刈り上げにしたところから
強《こわ》い毛が生えている状態というものは、
毛を毟ったニワトリを、
とくにニワトリの
皮がフニャフニャな首周り
を連想させずにはおきません。
さらに。
父がまだ子どもの頃。
ニワトリを絞めて毛を毟ったところ、
絞め方が充分でなかったのか、
裸にされたニワトリが
死に物狂いになって逃げ出した
のを
父の父であるトモジイが
目の当たりにし、
眼を回し、
腰を抜かしたのだとか。
そんなエピソードまで思い出されます。
エスカレーターを降り、
女性は野毛方面へ。
わたしは
セブンイレブンの横を通って
本町小学校のほうへ向かいます。

・台風圏低木に鳥鳴いてをり  野衾

電子辞書

 

・鹿の目のぎんがぎんがを踊りけり

このごろはもっぱら電子辞書。
なにがいいって、
まず
字がデカい。
これはほんと助かります。
紙の辞書は
大辞林をつかっていますが、
重いし字が小さい。
机に向かっているときはいいのですが、
机のないところで本を読んでいて
辞書を見たくなり本棚から大辞林を取り出すと、
椅子の上であぐらをかき、
その真ん中に
辞書を置いて見るようになります。
さらに、
字が小さいものですから、
メガネを外し腰をぐっと曲げ、
敵に見つからぬよう隠れるような姿勢をとり、
眼で目的の字面を
舐めるように追いかけます。
それでも見えないときは、
よっこらしょと
その場をいったん離れ、
机の引き出しから拡大鏡を取り出し、
みたいな、
それはそれは
たいへんな労働量となってしまいます。
そこいくと、
電子辞書はいと便利。
「かんたんサーチ」なるものがありまして、
しらべたい単語を入力すると、
その単語について説明のある辞書を全部、
もちろん収載されている辞書
ということになりますが、
ピックアップしてくれますから、
いやはや
なんともスグレモノ!
電子辞書様様であります。

・ひょんひょんと手拭い食みし鹿踊り  野衾