人生不可解

 

・夕暮れの首を火照らす残暑かな

ここ数年、
詩に興味を持ち
読んだり書いたりしていたら、
なぜか詩集や
詩の評論の仕事をいただくことが多くなりました。
ただいまは、
T・S・エリオットの詩
に関する評論集を編集しています。
エリオットの詩は、
翻訳ですが
少なからず読んできましたから、
仕事ではありますが、
個人的な興味と感心からもたいへん勉強になり
ありがたく思います。
また、
文章の歯切れよく、
もたつくところがありません。
繊細さとシャープな力のバランスが保たれ、
読んでいて実に気持ちがいいのです。
さて、
興味や関心を持つ領域の仕事をいただくたび、
あれ人生不可解
の疑問符が浮かんでくるわけですが、
このとき思い出すのが、
新井奥邃(おうすい)のあの言葉。
「世に神秘を嗤ふ者あり。学者に多し。思はざるの甚だし。
凡そ清浄なる者は是れ神秘に由らざるはなし。」
清浄なる者は、
「者」と書いて「こと」の意でしょう。
人生は不可解ですから、
なおさら面白く、
滝から身を投げるには及びません。

・ふるさとも町も時得て虫すだく  野衾