空のいきもの

 

・子らのない八月ぽっかりグラウンド

朝から蝉が鳴いています。
駅構内や電車内のアナウンスは五月蝿く感じるのに、
蝉ならいくら大音量でも五月蝿くない。
このごろ歩いていて、
蝉の死骸に間々ぶつかります。
けろんとひっくり返っています。
ひょいとつまむと、
実に軽い。
軽すぎて、
これに今までいのちが宿っていたとは
とても思えないぐらい。
スカスカでカラカラ。
まるで脱皮した抜け殻。
背中が割れて木に張り付いている
抜け殻同様、
すっからかんといのちが抜け落ちている。
殻のいきもの、
空のいきもの。

・蝉しぐれ浴びてやうやう江戸に入る  野衾