自虐ネタ

 

・朝ぼらけ五月のけふの始めなり

秋田魁新報に「きょうの言葉」というコラムがあります。
金言のような短いことばを取り上げ、
識者が解説を加えるというコーナーですが、
今月十九日付けの紙面に、
ソフトバンク創業者孫正義の言葉として、
「髪の毛が後退しているのではない。私が前進しているのである。」
が取り上げられていました。
ことば自体は、
クスッと笑える類のものですが、
このコーナーに取り上げられると、
格段に面白くなる。
だって
「きょうの言葉」というからには、
なんというか、
人生というか、
重い荷物を背負って坂道というか、
人間てぇものは、
みたいな、
ありがたい御ことばを期待するわけです。
そこへもってきて
上のことばなんですもの。
髪の毛の話なのに、
人生の教訓を含んでいるようで、
しかもなんだか語調が立派。
「~のではない。~のである」と。
このことばを取り上げたのは、
小説家の阿川大樹。
名前がまた立派。
大樹。
この樹なんの樹、大きな樹、てか。
このコーナーにふさわしい。
解説の後半、
「オフィスで、家庭で、居酒屋で、髪の量が話題になったとき、
「髪が後退しているんじゃなくて、僕が前進してるんだ」
という人が続出したら……と想像してみたら、思わずニンマリとしてしまう。
そうなれば、広い額が世の中を照らす時代がやってくるはずだ。」
アハハハハ…。
来ない来ない。
そんな時代、来るはずない。
教訓めかして言っているところがなんとも可笑しい。
ところで。
わたしの場合はどうか。
後退も前進もしない。
なぜならば、
わたしの頭はだいたい更地だから。
アハハハハ…。

・道草を愛でて時追ふ五月かな  野衾