ヘルダーリン

 

・鷹よ来いと叫ぶも五月烏のみ

手塚富雄さんが十年かけて書いたという
『ヘルダーリン』を読んでいますが、
いよいよ彼の人生を変えた女性ズゼッテが登場し、
風雲急を告げ、
面白くなってきました。
ヘルダーリンは一七七〇年生まれ。
ヘーゲルが「詩人の詩人」と評した詩人で、
飯島耕一さんの詩にもでてきますが、
ヘーゲルはもとより、
ゲーテ、シェリング、フィヒテ、シラーなど、
名の知られた歴史上の人物との交流も
華やかで目を瞠ります。
シラー宅を訪問した際、
同じテーブルに先客のゲーテがいるのに、
ゲーテとも知らずに、
シラーに会っていることに有頂天になっているなど、
まさに青年ヘルダーリンの面目躍如。
お隣りフランスでは、
革命を経、
ナポレオンが登場してくる時代です。
にしても、
学者というのは凄いもの。
小説ならいざ知らず、
膨大な史料資料を渉猟し、
二百五十年前に生まれた人物が、
まるでその辺の道を歩いているように描出するのですから。
バルザックの小説を読むのと同じくらい面白い。
いや、それ以上か。
ところで、
手塚さんの文章に、
「孤独な木村謹治先生」というエッセイがあり、
こちらはまだ読んでいませんが、
いずれ読もうと思いますが、
木村謹治というのは秋田県五城目町出身。
わが井川町の隣町。
大学でドイツ語を勉強していたとき、
木村・相良のドイツ語辞書をつかっていたのに、
当時はそんなことはつゆ知らず。
ちなみに木村・相良の相良のほうは
相良守峯(さがら・もりお)
こちらは山形県鶴岡市出身。
秋田と山形の人が
ドイツ語辞書の名著をものしたのいうのがまた面白い。

・しょんべんを田へしたもんだ山蛙  野衾