こんな電子辞書

 

・解読をせまる信号遠蛙

電子辞書を使い始めたら、
軽いし、字は大きいし、
キーワードを入れれば収録の全辞書から検索してくれるわで、
便利この上なく、
紙の辞書をひらく頻度が極端に減りました。
歳時記が入っているので、
句作するにも使い勝手がいいわけですが、
人間の欲望は尽きなくて、
こんな機能があればもっといいのに、
なんて考えることがしばしばで、
その最たるものが
写真を介した逆引き辞書機能。
わたしは花が好きなのに、
花の名前をほとんど知りません。
なので、
電子辞書にカメラが搭載されていて、
花なら花の写真を撮ると、
「やえざくら」
と名前を教えてくれるとか。
美しさを保ち
なかなか散らない花弁に向けてシャッターを押すと、
「うばざくら」だとか…。
ま、それは冗談として。
こういう機能を
開発していただけないでしょうか、
カシオさん。

・夕蛙カスタネットを叩きをり  野衾

蛙語

 

・人語絶え静かの闇を遠蛙

耳が変わったのか、
人が変わったのか、
まさか蛙は変わらないから、
おかしな話ではありますが、
秋田でも横浜でも、
蛙の声がこのごろ違って聴こえます。
ゲロゲロゲロとか、
ゲコゲコゲコとかと表記され、
それを見れば、
蛙と思って読むけれど、
烏がカーカーと鳴かないように、
蛙も
ゲロゲロ、
とか、
ゲコゲコ、
とは鳴かないようです。
草野さんなら、
るるるるるるるるるる、
あるいは、
ケルルンクックでしょうか。
わたしには、
カスタネットを高速で叩いているような音に聴こえます。
草野さんの
「るるる…」も悪くないと思いますが、
日本語の場合、
すぐに母音が張り付き、
「るるる…」を発音すると、
由紀さおりの
「夜明けのスキャット」よろしく
「るぅるぅるぅ…」
に近くなる。
日本語の特性ですから
仕方がないとはいうものの、
蛙は日本語を話しているわけでなく。
日本語でなく蛙語。
そんなところに
耳が行くようになったのも、
俳句をやり始めたからかもしれません。

・tttttrrrrrrr蛙かな  野衾

ダンゴムシ

 

・菜の花や日本海への道遠く

このごろの天気予報をみると、
南と北の気温が逆転現象を起こしたりもしているので、
暑さ寒さ対策を怠りなく帰省したのですが、
昨日の秋田の朝の寒さは
半端ではなく、
いつものように四時にいったん起きだし、
持って帰った本を読み出したものの、
一時間もたたぬうちに、
寒さがしんしんと沁みてきて、
あたまの芯まで凍えるようですから、
こりゃたまらん、
布団にとってかえしてもぐりこみ、
ダンゴムシのように身を丸め、
頭から布団を被って体温が布団にうつるまで、
ジッとしちょりましたよ。
寒かったのなんの。
いや、ほんとに。
そんなこともあってか、
上りの新幹線の車中ではうとうとすることが多く。
午後4時45分到着。
東京駅のホームは、
ぬるま湯のようでありました。
さて、
今日から後半戦です。
みなさま、どうぞよろしく!

・菜の花やうつつの夢を見るがごと  野衾

今日より五月

 

・喜ばし垣根越えたるつつじかな

いい季節になりました。
九州よりも北海道の気温が高い
なんて
逆さま事象もあるけれど、
おおむね、
凌ぎやすい日がつづきます。
散歩にはもってこい。
軽い靴より
少し重い靴をしっかり履き、
踵を意識しながらゆっくり大股で歩きます。
どこを歩いても、
花が好きな人は多くいて、
軒先の小さな花壇や鉢植えの花が咲き、
目を楽しませてくれます。
花の名前を知っていたら、
もっと楽しめるだろうと思うのですが…。
小さい頃から、
花がとくべつ好きだった
わけではないのに、
このブログに載せた写真を後から見ると、
圧倒的に花の写真が多いのに気づかされます。
まず色ですね。
歩いていて鮮やかな色に目が行くと、
そこに花がある。
この色、
印刷ではでないだろうなぁ。
ぜったい無理!
そうか。
仕事がらのことがあって、
それで、
花の色の微妙に驚かされているんだな。
そんな分析はともかく、
つつじの白い輝きは、
新雪の輝きとはまたちがって、
艶っぽく温かく
なめらかで。
沈黙の声まで聞こえてきそうです。

橋本照嵩『石巻かほく』紙上写真展
の十二回目が掲載されました。
コチラです。

・城に立つ青葉茂れる広瀬川  野衾