老いのイニシエーション

 

・春暁や烏の声も懐かしき

恩師竹内敏晴の書に『老いのイニシエーション』がある。
六十歳、
いわゆる還暦のあたりをピークとして、
生体としてのエネルギー放出の仕方が変わる
ことに触れているが、
昨晩、
三十九度近い熱に喘ぎながら、
そのことをつらつら思い出していた。
土方巽は五十七歳で、
野口晴哉は六十四歳で亡くなっており、
心身のエネルギーを一気に爆発させるような生き方に
自戒の念をこめ、
警告を発していたのではなかったか。
手もとに今、
本がないので、
正確ではないと思うが、
竹内さんも、
六十歳前後に、
坂道に駐車していたクルマのブレーキが外れ、
動き出した無人のクルマに
撥ねられたことがたしかあったはず。
仕事でも、
人との付き合いでも、
もう若くないことを
もっと自覚する必要がありそうだ。

・春暁の音蒼穹にひびきをり  野衾