カメ読書

 

・誘われてくぐり見あぐる花万朶

昨年九月、
神田神保町の東京堂書店にて、
文藝春秋前社長の平尾隆弘さんと対談した折、
司会進行役を務めてくださった学習院大学教授の中条省平さんが、
わたしの読書の型につき
「イソップ童話のような」と形容された。
そのときは笑って聞いていたのだが、
あとで、
ふと、
待てよ、
イソップ童話の何かな?
の疑問がもたげ。
「アリとキリギリス」?
ちがうな。
んーーーー?
なんだ?
んーーーー、
ひょっとして「ウサギとカメ」……
「ウサギとカメ」はイソップ童話か?
調べたら、
ありました。
「ウサギとカメ」もイソップにある。
そうだ。これだ。ちげえねえ!
てことは、
おいらはカメ!
ふむ。
たしかにな。
高校でも大学でも、
アタマのいい人はいっぱいいて、
こういう人たちと伍していくためには、
こつこつこつこつ
カメのように、
とまでは思わなかったけれど、
こつこついくしかないとは思ったから、
タイプとして
「ウサギとカメ」のカメは当たっている。
「イソップ童話のような」
と仰ったとき、
中条先生がイメージされていたのは
「ウサギとカメ」のカメで、
まず間違いないだろう。
資本論も源氏もプルーストも大菩薩峠も、
カメだから読める。
このごろのカメは週末、
『ジェイムズ・ジョイス伝』『田村隆一全集 5』『若い芸術家の肖像』
を読み終えた。
カメの読書はさらにつづく。

・季節詠む句作の途の桜かな  野衾