危機一髪

 

・だれ待ちて朧にうねる鶴見川

大腸検査をしばらくやっていないことを
ふと思い出し、
九年ぶりに内視鏡検査を受けに行った。
九年ぶりですか、
小さいのがぽつぽつあるかもしれませんね、
などと脅されつつ始まったのだが、
ポリープはひとつもなく無事終了。
数箇所赤く炎症を起こしているとのことで、
念のため細胞を取って検査に回し、
結果は後日聞きに行くことに。
検査が終っての直後、
目元ぱっちりつけまつけるの看護婦がそばに来た。
「いかがですか? だいじょうぶですか?」
午後は社内の重要なミーティングがあり、
検査が終ったとなったら、
即刻帰ろうと思っていたので
「はい。だいじょうぶです」とキッパリ!
「すぐ動いてだいじょうぶですか?」と、つけま。
「はい。これ、この通り」
そういって、そそくさと帰り支度をし、
その日の勘定を払い外へ。
だいたいわたしは病院が嫌いなのだ。
と、
なんだかお腹がぎゅるぎゅるする。
ははあ、
お腹に空気を入れながらの検査だったから、
ガスが溜まっているのだな。
ま、どうってことないや。
横浜線の電車に乗って桜木町へ。
ぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅる。
だんだん腹が張ってくる。
ガスを出せば楽になることは分かっている。
が、ガスを出す=屁。
ところが、
内視鏡検査のため大量の下剤を服用しているから、
安易にガスを出すわけにはゆかぬ。
なぜなら、
ガスを出すつもりが、実=糞
が出ぬとは限らぬ。
東神奈川駅を過ぎた辺りで、
シートから離れ、ドア付近でうずくまる。
もうダメ。
し、しかし、
こ、こんなことで電車を停めてしまったら、
三浦家末代までの恥。
くっ、くっ、くっ、くっそーーーーー!!!
ほ、ほ、ほんとに、くそが出そう!!!
横浜駅に着いてドアが開き
外へ飛び出しホームでうずくまった。
ふーふーふーふーはーはーはーはー……。
もはや虫の息。
「だいじょうぶですか? 駅員さんを呼びましょうか」
苦しさにあえぎながら見上げると、
サラリーマン風のりゅうとした男性と
髪の長い妙齢の女性。
やがて駅員ふたりが来、
病院へ連絡しましょうかと言ってくれたけれど、
「いえ。トイレに着けば治りますから」
と丁重にお断りした。
駅員の一人がわたしの鞄を持ってくれトイレまで同行。
「もうだいじょうぶですから…」
「ほんとうにだいじょうぶですか? 外にベンチもありますから。では私はこれで」
カフカの虫になったような気分でトイレまで。
便器にまたがりズボンを下ろし、
ガフガフガフ、ガ、フ、ガフッ、フ、フ、フーーーッ。
ああああああああ、すっきり!!
駅員さん、声をかけてくれた男性、女性、
まことにまことにありがとうございました。

・うららかやひとりダウンの時期外れ  野衾