まるます家

・赤羽や提灯揺する春の風

仕事の打ち合わせで赤羽へ。
Tさんのご自宅を訪ね、
資料を見せていただき、
本づくりのアイディアをいくつかご提案申し上げ。
終えて石橋と三人、
JR赤羽駅方面へ。
赤羽は、
わたしがちょうど十年、
石橋がほぼ十年、
口を糊した場所。
勤めていた会社が経営不振に陥り倒産、
全員解雇の憂き目を見、
その日、
だったか、
机の周りの荷物を片付けに行った翌日だったか、
以後の方針につき相談しよう
なんて書くと大げさでありまして、
さてどうすんべ~がな~
と向かった先が、
かの有名な、
そのころは今ほど有名でなかったはずの、
清野とおるさんの『東京都北区赤羽』や
久住昌之さんの『孤独のグルメ』にも取り上げられ、
赤羽といえばこのお店でしょう、
ぐらいの人気店に浮上した
「まるます家総本店」でありました。
ガラガラガラッ
(ガラス戸を開ける音)
「二階空いてますか?」
「寒いから、中に入って! 二階に声かけてみて!」
一階は立錐の隙間もなく。
「はいはいはい」
で、
そそくさと二階に上がっていくと、
ちょうど前の客が立ったテーブルが一つ空き、
三人なんとか腰を落ち着けることができました。
思い起こせば十六年前のこと、
春風社はここから始まったのであります!
く~っ!!
あれから十六年、
怒濤のような月日を重ね、
元い、
さざ波のような月日を重ね、
今日に至りました。
いずれにしても懐かしいでありました。
ビール一本、
新潟のお酒・金升300ml、
刺身三点盛り、
つぶ貝の刺身、
牛すじ煮込み、
どじょうとじ(丸煮)
イカフライ、
鯉こく、
どれも美味しく舌鼓を打ち、
〆て6600円也。
財布にもやさしいお店ってか。
そうそう。
Tさんが清野とおるさんのファンで、
道道いろいろ教えてくださり、
ここがお住まいになっていた場所ですと。
へ~、そうですか、
でパチリ。
全景を撮ろうと思ったら、
ケータイカメラのライトでは真っ暗で写らず、
仕方なく手前の看板を。

・まるます家春風立ちぬ二階かな  野衾

野衾

・寒い日はごく集中して仕事でき

先日、
初めてお会いする先生をお連れし、
ふく・うなぎ・どぜう・季節料理のお店
野毛にある福家さんを訪ねた折
の帰り、
若女将から
「野衾はなんとお読みすればいいのですか?」
と尋ねられ、
いや、うれしかったのなんの。
だって、
なんと読めばいいのかということは、
このブログを読んでいるということではないですか。
どうもどうも。
「野衾」は「のぶすま」
音読みだと「やきん」になりますが。
まあ、
「のぶすま」と読んでいただければ幸い。
泉鏡花の小説に登場する野衾
が気に入り、
つかわせてもらっています。
ムササビのことです。
ええ、わたくし、ムササビが好きなんです。
「のぶすま」のふすま(衾)ですが、
「ふすま」というと、
ふつうは「襖」と書きまして、
和室のしきりに使われる建具を指します。
ところが同じ「ふすま」でも
「衾」は掛け布団のこと。
したがいまして、
野衾とは、野のふすま、
いわば野外の掛け布団であります。
ムササビがバッと手足を広げたところは確かに掛け布団っぽい。
若女将さんが読んでくれていることを尻、
失礼! 知り、
うれしく、
気も動転し、
説明不足であったような
気がいたしまして、
この場を借り、
ご説明させていただきました。
どうもどうも。
また近々寄らせていただきます。

・寒い日はパソコン前で固まりぬ  野衾

靴クリーム

 

・休日の屋根を二月が通過せり

休日、本を読んだり原稿を書いたりして
疲れてくると、
散歩に出かけることもありますが、
天気の悪い日もあり、
天気がよくても
気が向かない日もあったりで、
そんなときは
靴や鞄など、
革製品にクリームを塗ります。
スポンジや布を使ったこともありましたが、
このごろは
クリームを直接指で取り、
靴や鞄に直に塗りこみます。
指ですから、
皺の感じ、
カサカサ具合がよく分かり、
どの程度塗ったらいいのか
素人ながらあまり迷うことはありません。
ところで、
このごろ靴磨きのおじさんを見かけませんが、
どうしたのでしょう。
許可されなくなったという話を
聞きましたが、
本当でしょうか。
簡易な椅子に腰掛け
靴を磨いてもらっている時間、
嫌いじゃなかったんだけどなぁ。

・朝の子の行ってきますの春近し  野衾

紙上展

 

・ゴミの日のそろそろ飽きた寒さかな

三陸河北新報社が発行する『石巻かほく』紙上にて、
写真集『石巻 2011.3.27~2014.5.29』の
紙上展が始まりました。
コチラです。
リードの
「報道写真とは違う感触がある」
の文言は、
そうねがって作った写真集であるだけに、
地元紙で取り上げられ、
しかも三十~三十五回も連載してくださる
ということですから、
感慨も一入です。

・あの娘から来るか来ないかバレンタイン  野衾

図書新聞

 

・鶯の鳴く音たずねて街を行く

日本には、
本の書評をもっぱら載せる新聞が
二紙ありまして。
一つが『図書新聞』もう一つが『週刊 読書人』
その存在は学生の頃から知っていて、
(たしか大学生協書籍部の入口に置いてあったような…)
ただでもらい、
ぱらり開いては興味がありそうなところを読み、
へ~、このごろは
こんな本がでてるんだぁと独り言ちたり、
だけで終らず、
面白そうだから
取り上げられていた本を購入したことも
少なくありません。
この度、
その『図書新聞』に人生初(!)の
書評を書かせていただきました。
しかもなんたって世界に冠たる源氏物語!
に関する
『女たちの光源氏』
という本。
源氏物語といえば、
二十代の頃から親しんできた物語ですから、
そりゃあ、
あたくしが書くしかないでしょう!
(なんだかよくわかりませんが)
というわけで、
(どうして「というわけ」なのかわかりませんが)
書きました。
コチラです。
機会を与えてくださった図書新聞さんに感謝。
さらに源氏が面白くなってき、
いい機会ですから、
瀬戸内寂聴さんの『女人源氏物語』も通読。
源氏はやはり、
光源氏より
女たちのほうが圧倒的に面白い。

・石垣の穴から鼠春隣  野衾

きょうのお酒

 

・風邪菌の暴る我が身や古戦場

新潟県新潟市にある
村佑酒造株式会社提供のお酒です。
村祐「黒」無濾過本生。
このお酒、
何がすごいといって、
お砂糖が入っているんじゃないの?
と疑いたくなるぐらい甘い。
甘いけれども、
とろりと~ろりすっきり消えてゆく。
んー旨い!
インターネットで検索すると、
「村祐」という銘柄は、
現在社長を務めておられる村山健輔さんが
専務時代に立ち上げたものとのことで、
和菓子に使用される「和三盆」
という
高級砂糖をイメージしたものといいますから、
むべなるかな。
砂糖なら、
わたしは黒糖が好きでありまして、
黒糖そのものはもちろん、
黒糖梅飴から
黒糖梅酒まで、
黒糖に目がないのであります。
この村祐「黒」無濾過本生、
黒糖はもちろん入っていませんけれど、
黒つながりで、
ファンにならずにいられません。
それはともかく。
このすっきりとした甘さ、
こくのある旨さ、
ただものではありません。

・風邪菌やとことん喉にへばり着く  野衾

風邪薬

 

・だれからのバトンこの風邪長引きぬ

天に軌道のあるごとく、
歴史も経済も
国も個人も
生成、発展、没落の運命を
まぬがれぬわけですが、
風邪もまたそのようであると、
このごろ体で知りました。
竹下景子が早めのパブロンというから、
早め早めと唱えつつ
薬屋に走り、
葛根湯など所望しさっそく服用、
これで万事OKと思いきや、
いったん治ったと
思わせておきながら、
実はちゃんとに治っておらず、
風邪としての成長の速度が遅くなっただけでした。
風邪はきちんとひくのがいい
という説もありますが、
栄養のあるものを摂って
ゆっくり休むのが一番のようです。

・静か夜を割れ鐘のごと咳き込みぬ  野衾