ごはん

 

・し残しの仕事忘れず忘年会

金子光晴の詩集『落下傘』のなかに
「ごはん」というが詩があります。
サブタイトルは「富士山麓にて」

「茶碗にもつた一杯のごはんは
日月とともに威《おほき》い。

はげた塗箸を前にした一杯が
みあげる雪の嶺のやうに、大空にそびえる。
先祖から、子孫につづく糧。」

と始まる詩の第三連に唸ります。
「茶碗にもつたごはんのあたたかさ。こころゆたかさも、むせいる淋しさも。
友よ。君は知つてゐよう。
僕も、しつてゐる。」
むせいる淋しさ…。
茶碗に盛ったごはんから
よく視ると
つぶつぶの湯気がでていて、
それは本当に
むせいる淋しさで…。
百姓でない光晴さんに、
なぜそういうことが分かるのか、
共感できるのか、
詩、
詩人というのは凄い。
こんな詩を
昭和十九年に作っていたことも驚きです。

女を愛したたえて生きたもう一人の巨人、
「ゲルニカ」を描いたピカソの最後の言葉は、
「女って、いいもんだよ」

・最早もう其処へ渡らず忘年会  野衾