昭和発見

 

・かさこその秘密めかして落葉かな

平成の空気は薄く、
何事によらず、
昭和を思い出すものに触れたくなります。
最たるものが『男はつらいよ』シリーズで。
先だっても
浅丘ルリ子がマドンナ役として登場する第一作、
『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』を見返しました。
旅先で出会った二人が
漁に出る船を眺めているときに、
静かに曲が流れてきますが、
その出だしを聴いていたとき、
ハッと気づきました。
「今日でお別れ」に似ている!
何度も見ているのに、
なぜ気がつかなかったのか。
「今日でお別れ」は菅原洋一が歌ってヒットした曲。
大ヒットといっていいでしょう。
菅原洋一をかつてテレビでよく見ていましたが、
このごろは、
懐メロ特集で見るぐらいで、
あまり見かけません。
アンパンマンみたいな顔立ちの静かな人で、
他の歌手とは違い、
俺が俺がと前に出てくることは決してなく、
地味なふつうの人だなぁと思って見ていたものです。
歌う歌も、
正直に言って、
とくにいいとは思いませんでした。
洟垂らしの田舎のガキには分からなかったということでしょう。
ところが、
寅さん映画のワンシーンを見、
大げさに言えば、
「今日でお別れ」の歌のこころが初めて分かった。
知っていることと分かることとは別、
発見することはさらに別。
いわばわたしは、
『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』を通じ、
寂しさの縁に触れ、
菅原洋一の歌の世界を発見した気がします。
さっそくアマゾンでCDを注文し、
きのう通して聴いてみました。
いいい! 実にいいい!
素晴らしいです。

・落葉踏む平らになりて割れにけり  野衾