紅葉山

 

・陸奥の山を突き抜け紅葉狩

姪っ子の結婚式がこの時期であったおかげで、
車中より存分に紅葉を堪能できました。
いつもなら、
本に目を落としていることが多いのですが、
ついつい顔を上げ、
窓外に目をやります。
小川が流れ川沿いの紅葉が光っています。
人家はなく。
色。
色。
再現不能の。
目だって本当に見ているのかいないのか。
目の裏でなら見るのか。
分かりません。
たとえば黄。
あの黄色。
だれが色を真似できるでしょう。
想念は早どこへやら。
次に来る想念はなぜか『寅次郎忘れな草』
「兄さんなんかそんなことないかな。夜汽車に乗ってさ、外見てるだろ、
そうすっと、……」とリリー演じる浅丘ルリ子。
「こんなちっちゃな灯りが、こう、遠くの方へスーッと
遠ざかっていってなぁ…」と寅さんこと渥美清。
旅情という言葉からの連想で言えば、
このシーンをすぐに思い出します。

・児らのこゑ寂しき里の紅葉かな  野衾

ストーブ

 

・車窓より秋の稜線波打てり

姪っ子の結婚式に参加するため帰省。
やはり秋田は寒かった。
この時期もはやストーブ無しでは居られません。
早朝、
灯りをつけ、
ストーブの火を点し、
それでもしばらくは部屋が暖まらぬため、
丹前を着込み、
さらに毛布を体に巻きつけ、
どっこいしょ。
万全の態勢にてソファの上に胡坐をかき、
持参した本のページを開きます。
中学時代からの変わらぬ姿勢。
車の音は聞こえず。
なんとも静か。
静か過ぎてうるさいぐらい。
ボーンボーンボーンボーンボーン。
そろそろ母の起きてくる時刻。
やがて。
「おはよう」
「おはよう」
それからしばらくして父。
「あいかわらず、はやな」
「おはよう」
夜はまだ明けず。

九月二十日東京堂書店にて行われた対談の後編が、
図書新聞に掲載されました。
コチラです。

・ふるさとを超えて寂しき秋の空  野衾