創業十五周年

 

・怒り開く天の裂け目に光りあれ

正確に言いますと、
本日が弊社創業十五周年になります。
明日からは十六年目。
さて今月は二週続きで周年行事がありました。
20日のトークショー、
27日のパーティ。
いろいろ感じ考え、
なかなか言葉にならず
出来ず、
詩の大鍋に浮いてくる言葉をすくい
「峠」を記すぐらいが関の山。
このページを読んでくださっている方の多くは、
行事へもご参加くださったのではないか
と想像され、
皆さんの感想にお任せしようと
甘えごころでおりましたら、
映画作家、監督の大嶋拓さんが、
ご自身のブログに写真つきで、
こころのこもった
すばらしい文章を書いてくださいました。
これ以上のまとめはありません。
有り難いことです。
スクロールし(1)(2)の順でお読みいただければ幸い。
コチラ

十五周年企画としてすすめてまいりました
橋本照嵩さんの畢生の写真集
『石巻 2011.3.27~2014.5.29』
の紹介記事が神奈川新聞に掲載されました。
コチラも、
こころのこもった
すばらしい文章です。
柏尾安希子さんが書いてくださいました。
あの取材の折の
橋本さんの語りの深さ、
内容と口調、
隣りで聞いていて震えました。

最後に。
パーティの際、
下の写真のかんざしをお忘れになった方、
もしこのページをご覧になりましたら、
ご一報いただけますか?

・忘の涯天機に泳ぐ魚かな  野衾

 

・鎌倉や枯れ松二本秋の風

霧の立ち込める道を歩いている
どこへ向かうのか
集中を欠くと
忘れてしまいそうなのだ
悲しさは何処よりかやつてきて
汚れてなどいない
けれど
それはそうなのだが…
手つかずの
楽しさ のあとの
呆けのとき
豊穣 に揺蕩う

宇宙にはまだだれもおらず
さて なにを
しようというのか なにを
さがそうとするのか
プチプチと鳴るのは 何?

観音崎公園の詩碑に刻まれた西脇順三郎の詩が気になるから
いつか行つてみたいと思つていたのだが
けふ吐く息と吸う息をじつと聞いているうちに
行つてみたくなつた

ここよりつづく
有為転変の道 浅き夢の名残り
ブルー ブルー
ブルーム ブルマー ブルーミー
さつきから木々の葉が白く揺れている

・天高しグラウンドより女子の声  野衾

人生の教科書

 

・ホヤ食ふて甘さ苦さや石巻

専務イシバシがキャッキャ喜び勇んでやってきます。
「ん! どうしたの?」
「わたしの本が大学の教科書に採用されました!」
「はあ!?」
「そうなんです。『人生の請求書』がっ」
「へ~へ~へ~! 3へ~だねこりゃ」
「でしょ!」
ということでイシバシ、
もし逆立ちが出来たら
逆立ちして社内を歩き回りたいぐらいの
嬉しい様子。
教科書採用してくださったのは、
『カフェの女主人』『リヴァ・ベラ』『ショートカットの女たち』
の翻訳書を弊社から上梓している桑原隆行先生。
フランス文学がご専門。
どの講座でお使いになるのか分かりませんが、
今の若いひと(ああ、おれもいつやらこう呼ぶよ)
のありようを考えれば、
さもありなんと頷かれる。
明日の弊社十五周年パーティには、
ケータリングサービスを業とする
山手サービスさんが加わってくれることになっていますが、
数名のコンパニオンの方は齢三十代だとか。
二十代ではまだちょっと、
と会長のお話にありました。
本を読むことは、
出版社ですし
ありがたいですが、
こころ配り、気遣い、挨拶など
人付き合いもまた大事。
ということで以上、
この度めでたく苦労人イシバシの請求書が
大学の教科書になった顛末でありました。

先週二十日、東京堂書店で行われた対談につき、
秋田魁新報に記事が掲載されました。
コチラです。

・何処へと白く招きし薄かな  野衾

好きになると

 

・五十過ぎ腹が旨しの秋刀魚かな

新しい仕事の打ち合わせに埼玉県越谷まで。
ご専門は別にあるのですが、
お目にかかった先生は、
昆虫、
とくに蝶々の収集において
おそらく日本で
五指に入るほどのコレクター。
大切に保管された標本を見せていただきました。
いやはやなんとも。
まずその色の美しさに息を呑みました。
どんなに技術が向上しても、
印刷では絶対に出ない出せない色。
その印象を告げるや、
死んだ時点で色は褪せるのだとか。
生きているときは
もっと美しい…。
昆虫標本の商人が世界中にいるらしく、
しのぎを削って世界に目をやり
世界を走り回る。
なんでもそうかもしれませんが、
人間ほんとうに好きになると、
何をしでかすか分からない。
好きを極めて数奇な運命を辿ることにもなりかねない。
漱石の「こころ」に彼の有名な
「恋は罪悪ですよ」のセリフがあるけれど、
恋は罪かもしれませんが、
罪は恋だけとはかぎりません。
どきどきしながら
先生の話を拝聴し、
研究室のある建物から出るや
外は既に真っ暗。
小雨まで舞い落ちて。
好き、好き、
好きになると。
いろんな罪を犯してきました。

・蕭条と卓に色添ふ青蜜柑  野衾

三冊三人

 

・秋澄むや本の中より現れり

観音崎公園にあるという西脇順三郎の詩碑を見に、
小旅行を計画していたのですが、
からだが少々バテ気味なので、
大事をとり
またの機会の楽しみにとっておくことに。
時間が浮いたので
ゆっくり本が読めました。
吉岡実『「死児」という絵〔増補版〕』(筑摩書房)
飯島耕一『浦伝い 詩型を旅する』(思潮社)
新倉俊一『詩人たちの世紀 西脇順三郎とエズラ・パウンド』(みすず書房)
これでみても、
まぁこのごろは詩と詩論が多くなりました。
三冊三様ですけれども、
飯島さんのは詩集でもありますし、
文体もそれぞれ異なりますが、
共通して言えるのは、
書き手それぞれの背中が見えないこと。
見えることでなしに
見えないことの共通性。
頭の使い方が似ているせいではないかと思われます。
頭も体の一部ということで、
バランスをはかり、
頭を働かせすぎないように注意する、
ゆっくり愉しんで書く、
そのようにして書かれた三冊であると感じます。
月の裏側が見えないように、
人の背中も見えません。
自分のものだけでなく誰のものでも。
押されたことを感じるだけです。

・ふるさとの色を集めて青蜜柑  野衾

社風

 

・文藝の匂い醸すや秋の風

弊社創業十五周年を記念し、
先週土曜日、
神田神保町にある東京堂書店六階ホールにて、
文藝春秋前社長の平尾隆弘さんと対談を行いました。
司会は学習院大学の中条省平さんです。
いやぁ愉しかったー!!
中条さんが隣りで道案内をしてくれることで
安心し、
もうもう羽を伸ばして喋りました。
平尾さんのお話はどれも、
経験に裏づけされた含蓄のあるものばかりで、
もっと聞きたくなりました。
お集まりくださったお客様もそうだったろうと思います。
ところで、
イベントの開始三十分前、
両氏とともにエレベーターで六階に上がりましたら、
会場の入口にきれいなお花が飾られていました。
見れば、
「御祝 株式会社文藝春秋より春風社様へ」
と書いてあるではありませんか!
驚きました。
平尾さんもご存じないとのこと。
さらに驚きました。
平尾さんは、
この日のことは
会社に話していないということなのです。
文藝春秋のどなたかが情報を知り、
上司とも相談して、
このようなありがたい心配りをしてくださったものと想像されます。
社風という言葉を思い浮かべました。
平尾社長が会社をお辞めになったのはこの六月。
三ヶ月前です。
社員ご一同が親しくお世話になったであろうとはいえ、
会社を離れた前社長の対談相手の会社向けに、
果して花を贈るだろうか。
こういうことのできる会社に少しでも近づきたいものと、
心を新たにいたしました。

・いつの日の夢の彼方の曼珠沙華  野衾

練り練られ

 

・日に一度下げて天下の秋となる

昨日昼、
専務イシバシ、武家屋敷を連れ、
本町小学校方面へ下り、
このごろ気になっていた店に入った。
麗々しく飾り立てることなく、
意匠が尖らず横になっているのも好ましい。
わたしと専務イシバシは肉の定食、
武家屋敷は野菜天麩羅定食。
画数やたらに多い。
それはともかく、
まもなく運ばれてきたお膳も整然と美しく、
味も悪くない。
というか、
美味しい。
きれいな店で、味も佳し。
なのに
なぜか客は少ない。
食後、
お茶をいただきつつしばらく雑談し、
尻がようやく重くなりかけた頃合を見計らい、
わたしがまず
サッと立ち上がり、
通路を進んで
奥に居た女将に声をかけた。
「ご馳走様でした。美味しかったです」
「九〇〇円になります」
「きれいなお店ですね」
「出来たばっかりですから」
「…………」
木で鼻をくくられた。
二度とは行かないだろう。

・月めくりこころ亡くすやセプテンバー  野衾

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