・蛞蝓《なめくぢり》首這ふ天のぬめりかな

朝 いつものように
コーヒーを淹れてる と
いつも淹れている
コーヒーなのに
とくべつ いいい香りがした

淹れたコーヒーを
カップに うつし
読みかけの 本の頁をひらく
西脇順三郎の詩「秋」が引用されていた

けずつた木屑を燃やすと
バラモンのにおいがする
(西脇順三郎「秋」より)

わたしがはじめてインドへ行つたのは八月
ビルの最上階から視たデリーのまちは
停止して観えた
のだが

地平線は かすみ
遠くの空を 煙が垂直に昇っていつた
秋は そこまで来ていた
のも 知らずに

バラモンの においをかぐために
しのおとを きくために
木屑を燃やしてみるのも悪くない

写真は、ひかりちゃん提供。

・バラモンのにおい起こせよ秋の風  野衾