定期健診

 

・天荒れて無音の夜の花火かな

三ヶ月ごとの歯の検診に、
行きつけの歯医者に行ってきました。
わたしを診てくれる歯科衛生士は、
名前は知りませんが、
いつもの人でした。
今回は検診に先立ち
医師によるレントゲン撮影もあり、
終了まで全体で一時間ほど。
すべてが終わって、
「今日はこれで終わりです。お疲れ様でした」と歯科衛生士。
「ありがとうございました」
「何か気になることはございますか?」
「気になるというほどのこともありませんが…」
「はい。何か…?」
彼女の眼がこころもち大きく見開かれています。
「ええ。昨日の夕刻六時四十五分頃だったと思いますが、
保土ヶ谷橋の交差点でおねえさんを見た気がしまして」
「えっ。ど、どんな格好をしておりましたか?」
「はい。白いTシャツにピンクのショートパンツ、サンダル履きにナマあ」
「あ゛あ゛、そ、それ、わたしです。恥っずかしい!!」
「そうですか。顔には自信があるのです」
「は?」
「あ。いや。自分のことでなく、人の顔を忘れないことにかけては、です」
「なるほど。お近くなんですか?」
「はい。交差点から見える丘の上です」
「そうですか。わたしは反対側のセブン、いえ、そうですか」
「これでスッキリしました。ありがとうございました」
「いえ。こちらこそ。恥ずかしい!」
「さようなら」
「あ。さようなら」

・ガツンとみかん道道ぐちょりねちょりかな  野衾