岩波ジュニア新書

 

・只管にこころ秘めたる二月かな

一九七九に発足したシリーズで、
巻末の「岩波ジュニア新書の発足に際して」の冒頭に、
「きみたち若い世代は人生の出発点に立っています。」
とありますから、
読者対象としては、
たとえば
近所のひかりちゃんやりなちゃんで、
どう考えてもわたしではない。
が、
このシリーズには、
「若い世代」だけが読むにはもったいない、
どの世代が読んでもおもしろく
ためになる本がいっぱいあります。
恩師・宮田光雄先生の
『きみたちと現代――生きる意味をもとめて』も
このシリーズに入っています。
『きみたちと~』にも感じられることですが、
このシリーズの著者たちは
おそらく、
自分の持っている薀蓄の
ありったけを傾けて
テーマを絞り、
もちろん編集者からの意向にも耳を澄まし、
よく吟味した、
みずみずしいことばを刻んでいますから、
面白くないはずがない。
そう感じたのは、
このシリーズの新刊
『書き出しは誘惑する――小説の楽しみ』を
読んだばかりだからです。
著者は中村邦生さん。
ご自身、小説も書いておられます。
小説の書き出しに光を当てながらの読書案内は、
読書案内ながら、
そのことを通して、
小説を読んで「面白い」と感じる
小説の「面白さ」とはそもそも何なのか、
その元にせまり、
ことばギリギリの微妙に
触れようとしているとさえ感じました。
読了後、
また無性に小説が読みたくなり。
ソーシャルリーディングのまえの
プライベートリーディング。
「面白い」小説を読むと、
ひとに話したくなるけれど、
じぶんだけのたからとして取っておきたい、
そんな気分をパラフレーズしてくれる本でした。
あんまり面白かったので、
同じ著者の
『いま,きみを励ますことば――感情のレッスン』
をさっそく購入。
週末に読もうと思います。

拙稿が秋田魁新報に掲載されました。
コチラです。

・早春の歌を習ひし師を思ふ  野衾