ジョセフ・クーデルカ展

 

・カレンダー剥ぎて息吐く師走かな

あんたがそうくるんだったら、
おれはクーデルカ、
こう出るか、
なんてことを口の端にのぼせつつ。
竹橋の東京国立近代美術館へ。
ジョセフ・クーデルカは、
チェコスロバキア出身の写真家。
一九三八年生まれ。
知らない写真家でしたが、
新聞に出ていた馬と男の写真を見、
一発でやられました。
この人にかぎらず、
すぐれた写真家の写真を見、
もたげてくるのは、
猛烈な嫉妬のこころ。
国がちがい
時代がちがっているからといって、
酸っぱい葡萄で済ませるわけにはゆかぬ。
なぜそう撮るのか、
なぜあなたにはそう見えたか、
そこが気になり始めると、
見ないわけにはゆきません。
わたしの数メートル前を、
白地に赤い模様の入ったワンピースの女性が居、
わたしが、
一枚の写真からつぎの写真へ移るや、
彼女も数枚先からさらにつぎへと移動し、
それがほぼ平行移動で、
追い越すわけにもゆかず、
その女性が
これらの写真をどう見ているかも
気になり始め…。
それもこれも体験で、
生きられる時間で、
これから
この写真家の写真を
何度も見ることになるでしょう。
見て好きになるでしょう。
たとえば下の写真はすぐに、
ポーランドの演出家イェジュイ・グロトフスキの、
『実験演劇論―持たざる演劇めざして』
を連想させ、
またある一枚は、
妖しきドアーズの
「Strange Days」を連想させたのでした。
五感を超え、
時間を感覚するまであと一歩、
すばらしい写真展でした。

・音なくて実の音在り冬日かな  野衾