六四夫婦

 

・謙り謙りして光りあり

JR桜木町駅で電車を降り、
改札口前にある
蕎麦の店川村屋で「遠藤の青汁」を買い、
エスカレータに乗って地下へ。
地下道をくぐり
上りエスカレーターで地上へ。
いつものことです。
雨が降っていました。
鞄から折り畳み傘を出し
パッと広げてさぁ外へ。
と、
向こうから、
一つの傘にちんまり収まった老夫婦がやってきます。
二人とも髪が白い。
傘を持っているのは爺さん。
突然、
婆さん傘の柄をつかみ
自分のほうへ傾けた。
爺さん苦笑。
どうも爺さん
一本の傘に二人入っているのに、
六対四ぐらいの比率で、
自分のほうをよけい
傘で庇っていたものらしい。
「な~によじ~さん。
わだしのほ~へも~とか~さをよ~こしなさ~よ。ふがふが」
と婆さん口では言わずに、
グイと柄を。
すばやかった!
それを目の当たりにし、
あはははは…と、
つい笑ったら、
二人、
すれ違いざまにわたしを睨み、
爺さん傘をすぼめ、
エスカレーターで地下へ降りていきました。
婆さん前、爺さん後ろ。

・舞い降りし紅葉鞄に入りにけり  野衾