32555歩

 

・秋深し朝日に匂ふ実香あり

先週末は年に一度の社員旅行。
金沢文庫から
六国峠を通り鎌倉の天園へ、
そこから北鎌倉まで歩き、
昼食後さらに歩いて
源氏山公園を経由し長谷まで。
「全長約十五、六キロになるでしょうか。
ま、大したことはありません」
などと強がって、
金曜の朝ここに書きましたが、
十五、六キロでどうも済まなかった。
二十キロは優にあったでしょう。
いやはやよくも歩きました。
昼食をとった北鎌倉の名店鉢の木の仲居さんたち、
旅程を聴いてみなびっくり。
さもありなん。
長谷で平地に下りたら
社員一同へろへろ。
由比ガ浜の宿に一泊し、
翌朝江ノ電でとことこ江ノ島へ。
水族館でイルカとお姐さんたちのショーを見たり、
島の参道両脇に並ぶ店を冷やかしながら、
タコせんべいを頬張ったり、
ふわふわアイスの食感に驚いたり、
二日目はオマケのようなもので
まったく楽。
台風二十号の余波が冷めやらぬ時期で、
若干天候が危ぶまれましたが、
杞憂に終り、
全行程天候にめぐまれ、
旅行日和ウォーキング日和の二日間でした。
ありがとうございました。

・源氏山歩き歩きて竹の春  野衾

いざ鎌倉

 

・秋深し未生の前の歌を聴く

トップページにも記したとおり、
今日と明日の二日間、
社員旅行のため休業とさせていただきます。
ご迷惑をおかけしますが、
よろしくお願い申し上げます。
毎年この時期、
社員同士の親睦も兼ね、
一年の労をねぎらい
また来たる期への英気を養うために、
ぶらり皆で出かけることにしています。
どこへ行くかはわたしの独断。
昨年あたりから
源氏物語がマイブームになっていますから、
源氏物語ゆかりの地へでも
行こうかしらんと一時思いもしましたが、
気が変り、
鎌倉へ行くことにしました。
横浜にある出版社が鎌倉へ社員旅行?
はい。
金沢文庫から
六国峠を通り鎌倉の天園へ、
そこから北鎌倉まで昼までかけて歩きます。
そう。
歩きます。
昼食をとりしばし休憩。
午後はまた歩き
源氏山公園を経由し長谷まで。
全長約十五、六キロになるでしょうか。
ま、大したことはありません。
なんちゃって。
このコース、
全部通しで歩くのはわたしも初めてですが、
歩いてみて感じるのは、
このコース、
百年ぐらいで俄かにつくったコースでないということ。
ひょっとしたら千年近く前、
すでに歩いた人がいたのではないか
と思えるすばらしいコース。
歩かない手はありません。
先人の歩いた土を踏み踏み歩きます。
長く歩いているうちに
今の時代の感覚が剥がれ落ち、
体が新しく生まれ変り、
もののふたちの血が蘇ってくるような、
そんな気さえしてきます。
それでは、
行ってまいります。

・彼氏出来奈実ちやん服も秋となり  野衾

六四夫婦

 

・謙り謙りして光りあり

JR桜木町駅で電車を降り、
改札口前にある
蕎麦の店川村屋で「遠藤の青汁」を買い、
エスカレータに乗って地下へ。
地下道をくぐり
上りエスカレーターで地上へ。
いつものことです。
雨が降っていました。
鞄から折り畳み傘を出し
パッと広げてさぁ外へ。
と、
向こうから、
一つの傘にちんまり収まった老夫婦がやってきます。
二人とも髪が白い。
傘を持っているのは爺さん。
突然、
婆さん傘の柄をつかみ
自分のほうへ傾けた。
爺さん苦笑。
どうも爺さん
一本の傘に二人入っているのに、
六対四ぐらいの比率で、
自分のほうをよけい
傘で庇っていたものらしい。
「な~によじ~さん。
わだしのほ~へも~とか~さをよ~こしなさ~よ。ふがふが」
と婆さん口では言わずに、
グイと柄を。
すばやかった!
それを目の当たりにし、
あはははは…と、
つい笑ったら、
二人、
すれ違いざまにわたしを睨み、
爺さん傘をすぼめ、
エスカレーターで地下へ降りていきました。
婆さん前、爺さん後ろ。

・舞い降りし紅葉鞄に入りにけり  野衾

愛染かつら

 

・弥次喜多と伊勢へ行きたし秋の風

父に『昭和の大ヒット大全集』上を買いました。
CD三枚組み。
正月、持って帰ろうと思います。
父も母も歌と仕事が趣味のような人なので、
きっと喜んでくれるでしょう。
父が叔父といっしょに
愛知県鍋田干拓地の工事のため
出稼ぎに行ったとき流行っていたという
こまどり姉妹の「ソーラン渡り鳥」も入っています。
昭和三十六年につくられた歌ですから、
わたしはまだ四歳。
青っ洟を垂らしていた頃です。
子どものころ、
こまどり姉妹のお姉さんのほうが好きだったことを
この日記にすでに書いた気がします。
一枚目のCDには「旅の夜風」が入っています。
これを聴くたびに胸がきゅんとなります。
CDの「旅の夜風」は
霧島昇と九条万里子が歌っていますが、
わたしが聴いて知っているのは、
おそらく
神戸一郎と青山和子が歌ったものだろうと思います。
なぜなら、
まだ家に来て間もないはずの
白黒テレビに釘付けになるようにして
「愛染かつら」のテレビドラマを見ていた記憶があり、
その主題歌「旅の夜風」を歌ったのが
神戸一郎と青山和子だからです。
長内美那子(おさないみなこ)演じる
高石かつ枝に
夢中になったものでした。
洟垂らしの小学生にドラマのストーリーなど
わかろうはずもありません。
が、
高石かつ枝を演じる長内さんが
なんだか、
とってもかわいそうだった。
かわいそうでかわいそうで
なんとかしてあげたかった。
性の昏さも甘さもまだ知らないころのこと。
それよりも、
切ない気持ちのほうを
先に知ったということでしょう。
ませたガキでした。

・蟹江にてこまどり姉妹を父の秋  野衾

秋分

 

・腰周りちんとんしやんの仲居かな

東に面した窓を開け、
西に面した玄関のドアを開けると、
風が通って気持ちよく、
ああいい気持ち、
いい風だ、
とつい口をついてでます。
風が家のご主人で、
住まいする人間が
避けて眺めて暮らしています。
酷暑の日が長く続いたので、
とくに涼風が心地よく
新鮮に感じられるのかもしれません。
保土ヶ谷駅頭ではおはぎを売っていました。

・秋深し和服で縛る乳房かな  野衾

万歳

 

・今正に眞有ありと充ち來る

秋田に電話。
母が電話に出、
家の田んぼの収穫が終ったとのこと。
大雨で土がぬかるみ、
台風で稲穂がなぎ倒され、
それはそれは大変な骨折りであったそうです。
母は腰が痛く、
頑丈な父は齢八十過ぎ。
いかに機械を使ってやるからといっても、
二人では到底無理。
近くに住む父の弟が連日手伝い、
父の妹夫婦が手伝い、
わたしの弟も手伝いしてようやく終了。
最終は父と母と叔父の三人。
三人で万歳をしたのだとか。
農家の苦労は、
やったものでなければ分かりません。
わたしは子どものころ、
ほんのちょっと
手伝ったというのも恥ずかしいぐらいなもので、
本当の苦労は分かりません。
父も母も、
サラリーマンに叶わないと、
よく口にしていたものです。
苦労が身に染みているのでしょう。
筋肉が攣るとオロナミンCを飲む父は、
ひどいときは四本で効かず、
五本飲んだとか。
最終日はそこまでひどくなく、
二本。
考えどころです。

・波の先幽霊船の滑り行く  野衾

一生懸命機械

 

・鏡花來舟津屋の前女性あり

家にVHSビデオのソフトが相当ありまして、
捨てて惜しくないものもありますが、
残してたまには観たいものもあり、
試しに
すぐそばにあったものを再生してみたところ、
うんともすんとも言いません。
どうやらビデオデッキが壊れてしまったようです。
ネットで調べたところ、
中古で安く手に入ることが分かりましたので、
さっそく注文。
数日して大ぶりのダンボールが会社に届きました。
会社帰りにタクシーで家まで運び、
コードを接続して
ナスターシャ・キンスキー主演映画のビデオテープを
機械の口に挿入。
再生ボタンを押すも、
うんともすんとも言わず。
へんなガガガー、チリチリチリと、
苦しげな音が聞こえてきます。
ははー。
テープがイカレちまったな。
取り出しボタンを押したら、
グヮシャッ!! ボーン!
青天の霹靂! そして爆笑!
テープが50センチメートルちかく飛びました。
まさしく飛んだ!
呆気にとられ、また大爆笑。
機械に笑わせてもらったのは人生初。
まるで
挿入されたビデオテープが口に合わないかのごとく、
グヮシャッ!! ボーン!
中古の機械ですから、
売りに出す前に直したかして、
そのときに取り出しボタンのバネを強くしたのでしょうか。
まあ、機械音痴のわたしには分かりませんが。
それにしても面白い。
だんだんこいつが愛しく思えてきた。
なんだか一生懸命じゃないか。
今度は
ベルトルッチ監督の『シェルタリング・スカイ』を挿入。
聴き覚えのある音楽が流れ、
これはちゃんと再生されました。
再生が確認できたので、
停止ボタンを押し、
テープを巻き戻してから取り出しボタンを押す。
グヮシャッ!! ボーン!
口に合う合わない好き嫌いにかかわらず、
一生懸命機械なのでした。

・しつぽりと女将桑名の煮蛤  野衾

 

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