頬を噛む

 

・涼しさや思はずこゑに出でにけり

食事をしていてどういうはずみか、
頬の内側や唇の裏、舌を噛んでしまうことがあります。
噛んだ瞬間、
やっちまった! と思うものの、
さほど痛いわけではありません。
指で触ってみると、
唾液に混じってうっすら血がにじんでいる。
ところが、
これがなかなか治らない。
噛んだときのことを
つらつら思い出してみます。
すると、
ある共通した状況が目に浮かんできた。
それは、
店が混雑していて
梟のように身を細め、
窮屈な思いをしながら食事をしているとき
ではなかったかということ。
狭い空間で身を細めていると、
口の中まで狭くなり、
それで歯があちこち当たったり
噛んだりすることになってしまうようです。
あとは疲れてボーッと寝ながら食べているようなとき。

・胸いつぱい深呼吸の秋となる  野衾