ふるさとのサイズ

 

・城ヶ島蟹が手を擦る足を擦る

十三日から十七日まで帰省していました。
正月なら箱根駅伝。
この時期なら甲子園。
秋田商業、初戦敗退。
はぁ、なさげね。
両親ともにスポーツ好き(観るのが)
なので、
つられていっしょに観ることに。
観ているうちに
どうしても感情移入し、
どっちかのチームを応援しています。
どっちか、
というのは正確でなく、
距離的に少しでも秋田に近いほうのチームを、
いつしか応援している。
単純といえば単純。
馬鹿みたいといえば馬鹿みたい。
でも正直なところ、
そうなので、
仕方ありません。
高校野球が始まるずっと前、
朝ごはんにもまだ間があるころ、
朝靄に煙る山々を見ながら散歩に出かけます。
草のいい匂いに体を包まれ、
鶏の声まで素敵に聞こえます。
バリ島でもポカラでもサンチーでも耳にした。
アジアは鶏が多い。
ここは秋田県井川町。
井内への坂を下り、
幼なじみの昌子さん宅の前をグイッと左へ折れ
農道を川へ向かって歩きます。
「おはようございますー」
「おはようございますー。朝は涼しくてえぇしなぁ」
「んだしなぁ。どーもー」
たしか去年もここであいさつした。
おばさん畑仕事に余念がない。
サギが白く艶かしい腹を見せ
ワッシワッシと飛んで行きます。
こちらでトンビがピーヒョロロ。
へ~、
ゲンジボタルの里でもあるわけだ。
看板の説明をひやかし
橋を渡って左折し川沿いをてくてくてく。
井川のせせらぎを聴きながら木の生い茂った坊塚へ。
同級生、帰ってきてるかな。
さらに歩いて大麦。
ここにも幼なじみが多くいた。
カブトムシ、クワガタ、野球大会、カキ氷、栗の花、
泳げない川泳ぎ、藪、蚊、女のハダカ、河童の川流れ。
夢の中とちがってすっかり整理されていた。
ぼんやり歩いているうちに
夢も朝もすっかり明けていました。

・濡れ濡れて塩水乳房洗ひけり  野衾