三度

 

・ひとから出ひとを離れて影絵かな

インド映画「きっと、うまくいく」を三度観ました。
三度、笑って泣きました。
嗚咽を漏らしたのは一回だけ。
インドのエリート工科大学に入学した
三人の学生が巻き起こす騒動に牽引され、
息つく暇もなく、
約三時間のドラマが演じられます。
ああ面白かった!
で、
また観たくなる不思議な映画。
学生たちがその大学に入ることは、
親の期待を背負ってのことであり、
学生もまた親の期待に報い、
エンジニアになることで
「幸せ」への切符を手に入れようとしています。
まさに幸福駅行きの切符。
その切符を手に入れるためには、
熾烈きわまる競争に勝ち抜かなければなりません。
負けは時により死をも意味します。
自分の夢の実現などもってのほか。
ところがここに、
競争など屁のカッパ、
自分の好きなことをやれば、
かならず成功は着いてくると言ってはばからない、
ランチョーというスーパー天才が現れます。
そんな天才いるかよ、
と思いながらもつい観てしまう。
この映画はまず、
ランチョーとその親友ファルハーンとラジューの物語なのです。
インターネットで検索すると、
みなさん、
笑って泣いて感動しているようです。
感動しますよ。
これに感動しなくて
なにに感動するんですか。
って、つよく言いたい。
そんな肩肘張る必要もごわせんが。
それで、
なににいちばん感動するかといえば、
感動の場面はいろいろあるわけですけれど、
自分以外のひとのために、
とにかく一生懸命一生懸命になる、なれるところ。
そこがいい! そこがすばらしい!
つくりものの映画だってかまわない!
どんな映画も
もともとつくりものじゃないか、
なんて。
わたしの知人の母親が亡くなったとき、
彼女は息子に対し、
自分のためだけに生きるのはつまらない、
ひとの喜びを
自分の喜びとするような生き方をしなさいと
遺言したそうですが、
そのことばを思い出しました。
主役ランチョー役の
アーミル・カーンがカッコよすぎですが、
カッコよすぎでも許しちゃいます。
友のため、
友の親のため、
恋人の姉さんのため、
ありったけの知恵をふりしぼり、
なりふり構わず行動する姿、
またそれに巻き込まれ同調し、
協力する人びとの姿に
どうしても
熱い涙がこぼれてきて、
理屈抜きで拍手喝采、
万歳三唱、
エールを送っている自分に気づきます。
あんなことはできないけれども、
すこしでも真似して
限られた人生を後悔することなく、
いい生き方をしたいと心底思いました。
もう一回観に行こうかな。
あのスピルバーグ監督も三回観たとか、
あのビル・ゲイツが
アーミル・カーンに会いにインドを訪問したとか、
この映画は館の外でもドラマを巻き起こしているようです。

・ぼわぼわと変化(へんげ)現る兆しして  野衾