おかずから

 

・桜の実鎌倉までの道しるべ

白いご飯が好きなので、
食事のときは
まずご飯を箸で挟んで口中へ運び、
よく噛み、
ご飯の焚き上がり具合、
米粒の旨みと甘さを味わってから
おもむろにおかずのほうへ箸をつける、
というのが
大げさに言えば我が半生の
食事法だったのですが、
そうすると美味しさからつい
ご飯をお替りするか、
先手を打って大盛りを頼むかすることになり、
若いころなら
それでもかまわないでしょうが、
五十代も半ばとなった今、
このままこれまでの食事法を続けていると、
いくら気功をやっているからとはいえ、
気功で消化するエネルギーを超えて、
腹に脂肪が溜まるのは火を見るよりも明らか。
かといって、
食べることが何よりも楽しみで、
食の欲望にからっきし弱いわたしとしては、
我慢することなどまず無理。
ならばと一計を案じ、
ご飯から箸をつけるのを止して、
おかずから積極的に食べることにしました。
むしろご飯をおかずにする体で。
それだけのことですが、
たったそれだけなのですが、
これが案外功を奏し、
このごろは、
普通のご飯茶碗一杯で食事が済むようになりました。
昨日の昼、
よく行く会社近くの定食屋に行きました。
黙っていてもご飯を大盛りにしてくれます。
大盛りでなかったのは、
わたしが病気をしていたときだけでした。
マスターに
「今日は、ご飯を普通盛りにしてください」
と告げると、
マスターとママさん声をそろえ、
「どうしたの!?」
立ち姿がまるでミーアキャット。
二人は、
わたしがまた
どこか具合でも悪いのかと思ったかもしれません。
「気分です」と答えたのですが。
これで一件落着のようですが、問題は鮨。
おかずとご飯がいっしょではないか。
鮨ネタを全部剥がして先に食べ、
後からご飯だけを食べるとか?
そんなことをしたら、店の人に嫌われるだろうな。

・はるばると時を眺むる能見台  野衾