鎌倉まで

 

・木漏れ日を揺らしささやく初夏の風

『釈譜詳節』の訳者である河瀬幸夫先生に
ガイド役をお願いし、
京急金沢文庫駅を起点とし、
六国峠を通って鎌倉まで歩いてきました。
梅雨入りしたこともあり、
事前には「曇りときどき雨」の予報でしたが、
当日のきのうの予報は「曇り」に変り、
「雨」は消えました。
本来の入山入口が封鎖されていたため、
迂回路をへて人通りのない山中へ。
程なく、
道にのたばる蛇に遭遇。
深碧色の青大将。
「死んでいるんだよ」と河瀬先生。
同行の家人、固まる。
「いや、生きていますよ」とわたし。
細い道の横が少し空いていたので、
蛇に気づかれぬよう静かにすり抜けようとしたら、
反対に蛇のほうがするするすると動き始め、
藪の中へ姿を消しました。
目が覚めた。
しばらく歩くと、
今度は木の枝に何やら黒い影。
きけば台湾リスとのこと。
能見台とは、
昔は、ついこの先までが入海になっており、
それはそれは絶景かな絶景かな。
ひと呼んで能見台。能(よ)く見える。
なるほど。
さもありなん。
ところどころで、
先生の景観にまつわる説明を拝聴し、
ゆっくり進行いざ鎌倉へ。
途中、野生の桑の実を食す。甘い!
港南台のほうからやってきたというおじさんが、
桑の実を採ってはビニールの袋に入れていました。
持ち帰り、ジャムを作るのだとか。
おじさんに別れを告げ、また歩く。
落ちた桑の実が土を黒く紫に染めています。
桑の実だけでなく、
さくらんぼも落ちていました。
拾って口中へ。苦い!
先生の健脚に驚きながら、
木漏れ日を肩に浴び、
気づけば、
わたしはいつの間にやらだんまり虫。
六国峠から天園へ。
明月院方面へ下山し、昼は鉢の木にて。
逗子から初めてのシーサイドラインで並木中央へ。
先生のお宅へお邪魔ししばし歓談。
韓国土産を頂戴し、
さらに京急富岡の駅まで送っていただき、
電車でとことこ井土ヶ谷まで。
歩数三万、
歩行距離二十キロの行程でありました。

・尾根づたひ歩き歩きて花ざくろ  野衾