くじ

 

・梅雨湿り珈琲の香の懐かしき

横浜駅に近接するジョイナスか
ダイヤモンド地下街でいま買い物をすると、
お買い上げ500円(税込)ごとに
サマーチャンスくじの抽選券が1枚もらえます。
抽選券6枚で1回、
ガラガラを回してポロッと玉の出るくじを引けます。
ジョイナスも地下街もよく利用するので、
この催し物が開催されているこの一か月間、
わたしは三度抽選会場に足を運びました。
特賞は、
ハノイの旅または香港の旅。
きのう、
抽選会場に並んでいたら、
横にいた初老のビジネスマンが、
若い部下に向かって、
むかしベトナムが北と南に分かれて
戦争したことがあったのを知っているか、
なんてことを訊いていました。
ぼやけたことを答えた部下に滔々と
ベトナム戦争についてひとしきり語っていました。
この二人、
なぜ列に並ばず
わたしの横にいたかといえば、
確かめたわけではありませんが、
おそらく、
ベトナム戦争について
ぼやけたことを答えた部下のさらに部下が、
三人を代表し、
というか、
上司に命じられてくじを引くべく、
列に並んでいたものと想像されます。
そうにちげーねー!
なんて。
ここで別に興奮することはないわけですが…。
それはともかく。
わたしはガラガラを一回回し、
赤い色の
ウサギの糞みたいな玉が
ポロッと出て、
情けないポケットティッシュを
一個もらい、
回れ右して気功教室へ向かいました。
ベトナム戦争の講義はまだ続いているようでした。

・待ち待ちて我田他田も喜雨の中  野衾

姜さんのトークイベント

 

・気がつけば一日黙しゲラを読む

在日コリアン三世の作家、姜信子(きょう のぶこ)さんが
故郷喪失者(ディアスポラ)として、
「ディアスポラ・戦争・再生」をめぐり
亡命チェチェン人ジャーナリストの
ザーラ・イマーエワさんと対話した記録を
今年弊社が刊行したことは
すでにこの日記でも触れましたが、
その姜さんが
新著『旅する対話 ディアスポラ・戦争・再生』
について語るイベントが
7月13日(土)午後2時より春風社で開かれます。
「姜信子×BOOKSHOP kasper 語ろう、本と人の間にあること」
1ドリンク付き1000円。
申し込みはカスパールさん(電話080-5515-1023)
までお願いします。
また、昨日、
神奈川新聞文化欄に
姜さんへのインタビュー記事が掲載されました。
コチラです。
東日本大震災後の今、
ひとりひとり自ら問い続けることがいかに大事か、
そのことを肝に銘じたい。

・六月は鏡花の色に染まりけり  野衾

テンション

 

・大活字季節身に染む句集かな

きのうは十文字学園女子大学の講座の日。
早くも十一回目を迎えたきのうのゲストは、
映画作家、映画監督の大嶋拓さん。
製作・監督・脚本・編集を自ら手がけた
名作『火星のわが家』について、
スクリーン上で実際に映画を見ながら
映画の作り方、苦労、裏話など
分かりやすく
懇切丁寧なお話を聴くことができました。
終始なごやかな雰囲気が教室に充ちていました。
チャイムが鳴って講義が終り、
それからリアクションペーパーを書いたためか、
時間が無く
全体的に文章が短めでしたが、
最後まで楽しんで聴いたという感想からも測られるように、
学生たちは
十二分にゲストの話を堪能したようです。
なかに、
わたしのテンションが
いつもより高かったというのがあり、
ああ、学生はよく見ているなと感心しました。
来週は『東京都北区赤羽』でブレイクした
漫画家の清野とおるさんをゲストに迎えます。

・外よりも内気になりて夏の朝  野衾

体癖

 

・ただ一歩タイムマシンか木下闇

昨年暮れにやったぎっくり腰のときも感じましたが、
ちょっとした癖が長年の間には
しこりとなってしまうことがどうもあるようです。
椅子に座って脚を組むのに、
意識しないでするときは
右の脚に左の脚をのせます。
何十年もそうしてきたのでしょう。
きたのでしょうとは他人事みたいですが、
意識して
左の脚に右の脚をのせると、
なんだかぎごちなく感じます。
カバンを持つときも、
意識しなければ、
つい左手に持っています。
してみると、
わたしの体は
ちょうど二十六夜月のように湾曲し、
骨盤との関係もしたがって
左右バランスを欠いているに違いありません。
体のことだけではないかもしれない。
人生の大きな転機に、
また日ごとのさまざまな選択のレベルにおいて、
他人は知らず
各人個性的に判断し行動を決するのも、
もとはといえば、
積もり積もった性格のちょっとした歪み、
癖がそうさせた
ということもありそうです。

・大欠伸して夏の朝取り込みぬ  野衾

椿姫

 

・蒔くことも刈ることもせず夏の雲

東京文化会館にて、
ハンガリー国立歌劇場による
ヴェルディ作曲『椿姫』を観てきました。
原作は、
アレクサンドル・デュマ・フィス。
デュマ・フィスは、
『モンテ・クリスト伯』の作家アレクサンドル・デュマの息子。
主人公のヴィオレッタ役は、
ギリシャ出身のディミトラ・テオドッシュウ。
ヴィオレッタ役は日によって
もうひとり、
イタリア生まれのエヴァ・メイも務めたのですが、
新聞で公演の広告を見たときに、
わたしのなかの椿姫のイメージに近い
ディミトラ・テオドッシュウが主役を務める
日と会場にしました。
デュマ・フィスの原作を岩波文庫で読んだのは、
今から三十五年前。
大学生のときでした。
娼婦マルグリット・ゴーチェが気の毒になり、
激しく同情し、
自分を恋人の青年アルマンになぞらえ、
マルグリットに
まったく恋をしてしまったのでした。
読み終わって、
あまりに感動し呆けてしまい、
ふらふらと何も手につかず状態、
工学部の学生だった畏友I君に本を貸したところ、
I君もガッツリ打ちのめされたらしく、
負けず嫌いのわたしとI君は、
互いに感動比べ(!?)をしたものでした。
以来、三十五年。
母のようなディミトラ・テオドッシュウ演じる
ヴィオレッタの歌にあわせ、
「さようなら、過ぎ去った日よ、美しい夢よ」
の日本語字幕が出たとき、
過ぎ去った日を懐かしく
少し切なく思い出したりしました。
若い人を除き、
会場にいたすべての人が
そうだったのではないかと思います。
ヨーロッパの熟成された、いいオペラでした。

・Tシャツをくぐり下方の腹眺む  野衾

東京都北区赤羽

 

・男あり女ありして五月闇

『東京都北区赤羽』は、
東京都北区赤羽を描いた
清野とおるさんの傑作漫画のタイトル。
十文字学園女子大学のゲストとして
ご登壇いただくことになっていますので、
①~⑧まで再読することにしました。
1989年から1999年までの十年間を
そこでわたしは過ごしましたし、
初めてのときは、
面白い面白いで読み終えた『東京都北区赤羽』ですが、
再読にかかってアッと驚いたのは、
①巻の最初のほうの
何でもない小さいコマですでに、
後にキーパーソンとなる二人らしき人物が、
なにげなくさりげなく
ちゃんと描かれていることです。
この漫画はほとんど実話で、
登場する人物もお店も実在していることは、
漫画を見ればすぐに分かります。
が、
あのコマに描かれた場所に、
あのときあの二人が実際にいたかとなると、
それはそうともいえない気がしますし、
むしろ、
フィクションとして、
二人をそこに描きこむことによって、
作品の厚みはさらに増していると思われます。
来週、赤羽で
事前の打ち合わせをすることになっていますから、
その辺のところを訊いてみようと思います。

・ぢくぢくと溶けて爛れて五月闇  野衾

湿気

 

・あぢさゐや酸性土で青くなり

梅雨どきですから仕方ありませんが、
気温がそれほど高くなくても、
湿度が高く
体がねばねばして気持ち悪い。
この気持ち悪さに慣れることはなく、
もうしばらくの辛抱とあきらめてはいます。
が、
湿気というのは凄いものだと
ちょっと驚くことがありました。
この日記を書き終えると、
わたしは次にコーヒーを淹れ、
コーヒーカップを
本棚の隅の所定の位置に置き、
アームチェアに座り少し前にずらします。
前にずらすのは、
つかわないときは、
本棚に近く、
邪魔にならぬよう置いているからです。
数日前、
いつものように
コーヒーカップを本棚に置き、
アームチェアに座って
前にずらそうとすると、
動きません。
もう一度。
動きません。
力の程度を変えたら、
やっと動きました。
五本の湾曲した脚の下に、
フローリングの床板を傷つけないようにと
サイズに合わせて
フェルトを切って貼っているのですが、
それが湿気によって滑りが悪くなったのです。
滑り具合がふつうになるのがいつのなのか、
ちょっと楽しみ。

・あぢさゐやアルカリ土で紅くなり  野衾

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