トイレにて

 

・天狂ひ季節を忘る夏日かな

木曜日は気功教室。
かながわ県民センターの改装工事のため、
このごろは少し手狭の三階の部屋があてられています。
いつものように、
センターに入ったら、
まず玄関先に置いてある消毒液で
手を消毒し、
それから右横奥のトイレに向かいます。
トイレに入ると、
用を足し終えた男が一人、
洗面台の鏡の前に陣取っています。
わたしが便器に向かい用を足していると、
手を洗う音が聞こえてきました。
なんの不思議もありません。
用を足し、手を洗っている…。
ところがその男、
水道の蛇口を閉めてから、
何度も何度も、
手をほろっています。
「ほろう」は秋田弁?
標準語ではなんと言う?
手を上下に振って水を切っています。
きっと
ハンカチを持っていないのでしょう。
と思ったら、
今度はパンパンパンパンパンと、
パン生地を職人がはたくときのような音を出し、
自分の両手を叩いています。
あくまで、
ハンカチを使わずに
水を最後まで切りたいようなのです。
それがしばらく続いたので、
わたしは可笑しさをこらえ、
しばらく便器から離れられませんでした。

・狂乱の街を冷まして雨が降る  野衾