山田屋の白露ふうき豆

 

・連翹の色に目覚める里の朝

連休の最後、
蔵王温泉大露天風呂に浸かりたくて山形へ。
硫黄の匂いただよう宿で一泊し、
翌朝バスで山形駅へ。
駅ビルのみやげもの屋でぺそら漬け、やたら漬け、
青唐辛子のみそ漬けを購入。
山形は漬物の宝庫。
どれも、
昨年三月二日に亡くなられた工藤正三先生から
教えてもらった、
というか、
横浜へ来られるときに必ず持ってきてくださり、
味を知った漬物ばかり。
先生がお持ちくださるもう一つに、
ふうき豆という生菓子がありました。
駅ビルでは
何社かのものが出ていましたが、
先生がお持ちくださるものが欲しくて、
漬物を買ったところのおにいさんに、
一番美味しいふうき豆はどこのものかと尋ねたところ、
言下に、
山田屋と教えてくれました。
本店でしか売っていないとのこと。
根拠はありませんでしたが、
工藤先生が買ってきてくださったのは、
それに違いないと思い、
タクシーの運転手にふうき豆の山田屋と告げ、
店まで行ってもらいました。
包装紙にはさむ赤い紙を見た瞬間、
これだ! と思いました。
間違いありません。
先生は、
『知られざるいのちの思想家 新井奥邃を読みとく』
『新井奥邃著作集』全十巻
の編集のたび、
また、
毎年六月に行われる新井奥邃先生記念会のたびに、
わざわざ、
山形市十日町2丁目5-45の山田屋に
足を運んでいたのでした。
いた人がいなくなるのは、
本当にさびしいものと思いました。

・露天風呂裸の猿の五月かな  野衾